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「返して! 返して! 僕の赤ちゃんをどこにやったの! なんで赤ちゃんを連れて行ってしまったの! 僕が悪いことをしたから、僕が穢らわしいオメガだから、いけないの⋯⋯っ」
ただ窘める先生であったが、愛賀の耳には届かず怒りをぶつけるように先生のことを叩きつけた。
「オメガに、なりたくて⋯⋯なったわけじゃない⋯⋯っ、オメガだから嫌になったの⋯⋯っ?」
僕が悪いことをしたなら謝るから、俊我さん、悪いところはちゃんと直すから、僕のことを置いて行かないで。赤ちゃんを連れて行かないで。
ひくひくとしゃくり声を上げ、目の前にいない相手に訴えていたが、意味もないことだった。
けれども、胸の内を言葉にしないと自分がどうにかなってしまいそうだった。
僕はどうしたら良かったの。
いつまでそうしていただろうか。慟哭のような叫びに対して窘めることもなく、ただそこに突っ立っていた先生に拳を振り上げていた愛賀は急に泣くことを止め、呆然とした。
「姫宮さん、疲れたでしょう。ゆっくり休みなさい」
気遣っているような口調で愛賀を横たわらせた。
抵抗することもなく、無気力となっている愛賀に布団を掛け直した。
「では、おやすみなさい」
足音が遠ざかる。
愛賀はそれを一瞥することなく、涙を一粒零した。
「⋯⋯どう、して⋯⋯」
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