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「──先生、私やってみたいことがあるんです」 様子を伺いに来た先生の言葉を遮るように話し出した。 「⋯⋯え、わた⋯⋯何でしょう」 「代理出産というのをやってみたいんです」 驚いたように目を丸くした。 言ってはいけないことだっただろうか。 しかし、不安を募らせる愛賀を払拭させるように「そうですか。何かをしたいという気持ちはいいことですよ」と微笑んだ。 その表情を見た途端、緊張していた身体が解れるのを感じた。 「でしたら、姫宮さんが安心してできる環境を整えておきます。その間、姫宮さんはちゃんと食事をして体力を付けましょうね」 「はい、ありがとうございます」 すんなりと話が進んで良かったと思う一方、本当にそのような話を信じてくれ、頼っていいのかと不安な気持ちが再度溢れてきた。 でも、なんだっていい。このお腹に子どもを宿らせてくれるのなら。 「⋯⋯私の⋯⋯赤ちゃん⋯⋯」 戒められた自身の腹部を見つめた。 誰かに言われないと、誰かにしてもらわないと自分で何も出来なくなってしまった。 けれども、それらをしてくれる人も今はいない。 自分でこれから先どうにかやっていかないといけない。 ずっと、独りで。 誰かに愛してもらうことは叶わずに、他人の愛を代わりに身篭って大事に大事に育てて、産む。 この身がボロボロになるまで、ずっと。 もう、それでいい。それでいいんだ。 オメガとして産まれたのだから、少しでも人の役に立たないと生きているだけで迷惑をかけているのだから。 自身のお腹を触ることも出来ず、ただ見つめることしか出来ない愛賀はやがて目線を窓の外に映した。 今日も嫌に眩しい。

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