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「では、失礼します」と軽く会釈した主治医は看護師と共に立ち去った。
「⋯⋯」
主治医らがいなくなった後、テレビの音が流れてくる。
それをただ呆然と観ていた。
発情期の時、最初の主治医と間違いがあったのだろう。
けど、間違ってでもいいから子どもが出来て欲しかった。
オメガであるそれが可能であるのに、それすらもやることを許されない。
何がいけないんだろう。
何で欲しがってはいけないんだろう。
あのようなところで数え切れないほど相手をして、穢れているから?
"あの人"が必要なくなったのは、自分が男であるから?
女性のような顔をしていてそそられるだとか、女性の格好が似合っていて可愛いと言われてきた。
本当の女性じゃないから、捨てられたの?
『代理出産は前よりも知名度が上がりましたが、それでも世間では理解されにくいところがあるようです』
何も届かなかった耳が反応をした。
代理出産。
オメガでもやってもいいんだと思えた仕事。
目線をテレビの方へ向ける。
あの時の夫婦がテレビ局のスタジオに出演し、キャスターにインタビューをされている場面が映し出されていた。
『代理出産というものは元々馴染みがなかったものですし、それに加えてオメガという性に対してあまり良くない印象を持たれるでしょう。ですので、まずは第二の性に対する固定観念から払拭し、それから僕がしていることを理解して頂ければ』
代理母のオメガがキャスターににこっと微笑みかけていた。
自分との子どもが望めないなら、誰か との子どもを望めばいい。
もう取り戻せないひとときの擬似体験 を味わいたい。
だから───。
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