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第17話(side姫野)
傾きだした日差しに、進む秒針の音。放課後の教室に残っているのは僕たちだけだった。全教科赤点をとっている百瀬は桜庭くんたちとの勉強会だけでは、カバーしきれず、僕が勉強をみることになった。
伏せられた長いまつ毛。薄いくちびる。ニキビのひとつもない綺麗な肌。悔しいけど女子が騒ぐだけあって、百瀬は美形である。
黙っていれば、格好いいのに。
そう思いながら、テキストに視線を落とすと、指を絡められた。
「え、な、」
「何見てるの、えっち」
カチ、と目が合って心臓が跳ねる。
「別にお前なんか見てないし!」
「えー、見てくれてもいいよ?ほら」
ぷい、とそっぽを向くと、あごをくい、と持ち上げられて、至近距離で視線が合う。
心臓が、うるさくなる。
「……ねえ、姫ちゃん」
百瀬が、怪しげにわらう。
その、妖艶さに顔が熱くなる。
「テストクリアできたら、ご褒美ちょーだい?」
「な、なに」
「夏休み、俺と一緒に夏祭り行こうよ」
は、と目を瞬く。
そんなこと、女子じゃなくて、自分に頼むだなんて。
「み、みんなで行こうってこと?」
「ううん、ふたりで」
だめ? そう言った百瀬がいつもより自信なさげに見えて、胸がきゅうっと苦しくなる。
「べ、別にいいけど……」
「ほんと!? やった!」
百瀬が、無邪気に破顔して笑う。また、胸が締め付けられて、僕は首をかしげた。
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