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第16話(side姫野)

朔を連れて、グラウンドに戻ると、音楽がかかり出していた。女子と男子がペアになって、踊っている。その中央に百瀬を見つけて、目を瞬く。 え、なんでアイツひとりなの。 じっと見ていると、カチと目があって、百瀬が走ってこちらまで来た。 「え、ちょ、なに、」 「姫ちゃん、おいで」 手を引っ張られて、グラウンドの中央にでる。 「ペアの子がさ~休みでさ~」 「ちょ、僕振り付けとかわかんないんだけど!」 「適当でいいよ。リードするから」 百瀬に手を取られて、グラウンドをくるっと回る。 汗がにじむ。音楽と百瀬に身を委ねていると、心臓がドキドキなった。 ――楽しい、かも。 「せっかくの体育祭じゃん、泣いて終わってたらもったいないって」 目の前にいる百瀬がふわっと笑う。 ずるい。 いつも、貼り付けたような笑顔しかしないくせに。こんなときだけ、優しく笑うなんて。 音楽がなり止んで、百瀬とポーズを決める。 さっきまで、振られて泣いていたはずなのに、心の中を百瀬がいっぱいに占めていて、熱くなる頬を隠すように下を向いた。

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