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第1話 1回目の異世界

 1度目はスーパーで買い物をしている途中の事だった。  買い物カゴをカートで押しながら満杯にしていた途中、急に光を帯びた床に落とし穴が現れカートごと異世界へ出現した初崎(はつざき) (めぐる)は、多数の魔術師たちに囲まれながら「神子」と呼ばれて崇め奉られた。   「なんだあの手押し車は!?」 「野菜に似たものを多く詰め込んでいる!カゴが何か珍しい物質でできているようだ」 「野菜以外に何かおかしなものを沢山お持ちのようだ」 「これらはなんなんだ一体……」 「しかし、召喚には成功した!これで我が国は安泰だ」 「いや、待て」 「なんだ、なんだ」 「おかしい。神子様から魔力が一切感じられない」 「本当だ……。神子様はこの世界で一番の魔力量を保有している筈なのに、なぜだ」 「魔力がない人間などこの世界に居るわけがない。魔力がないとこの世界の人間であればすぐに死に至るはずだ!」 「では、あの者は一体なんなのだ!神子様!」 「神子様!!」  召喚されて数分も立っていないだろう。  その間、巡はろくに言葉も発することができなかった。  なぜなら召喚された先の世界では魔力のない人間は死に至るようであり、自分には魔力が一切無いなどと目の前の魔術師たちが宣っているからである。  そう、召喚されて数秒で瀕死の危機に陥った巡は言葉など発する余裕などなかった。  息が苦しい。そして召喚に成功したと喜んでいるところ悪いが明らかに人違いである。  そう、最後に言い残す事があるとすれば…… 「スーパーの品……、万引きじゃんコレ」  ピカッ。  またしても複雑な術式の魔法陣が巡の足元に現れた。

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