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第2話 2回目の異世界

「聖女様!聖女様が降臨なされた!召喚は成功だ!」 「眩しい!眩しくてよく見えないが見目麗しい!」 「聖女様だ!これで我が国の天候も日の恵、雨の恵に恵まれることだろう!!」  まさかこれは。    一瞬で悟った。  そして思い出した。一度目、人違いで自分を召喚し殺した世界があった事を。   「俺は一体……」  !?    驚いた。  自分の発した声が、明らかに自分の物とは違う、いうなれば女子高生くらいのあどけない女子の声だったからである。   「聖女様!!」 「聖女様!!!」 「え……いや、こういうのもアリなの!?」  転生である。    普段、しがない会社員として工場勤務していた初崎 巡、25歳童貞。明らかに若返った上に女子になっていた。   「しかし……今回の聖女様は男性であられると水晶玉では予知が出ていたのではなかったか」 「!?」 「た……確かに。ではこの方は、一体なんなのだ?」 「!?!?」  驚きの連続である。  なんでだよ。  性別まで入れ替わって年齢まで操作されてるのに、なんでだよ。    またしても人違いである。    というか、聖女という先ほどから聞こえてくる単語は一体何なのか。聖「女」であれば女の筈だろう。  男性の聖女って、何!?   「あの~申し訳ないんですけれどもぉ」  魔導士のうちの一人がヘラヘラと声を上げる。 「なんだ。申してみよ」 「術式の一部、間違っちゃってます。一部だけ100年前の術式が混ざって書き込まれてます」 「何!?」 「多分ですけど、聖女様、人違いです」 「何ィ!?」 「異世界召喚にはこの国の魔力全てを使用してしまうので、もう術式は発動できません~」 「何だとォォォ!!んなバカな!!」  いやそれ、俺のセリフ~!!  巡は黙って異世界の会話を眺めていた。  今度は前回のように召喚後すぐに死に至るわけではないようだ。    もしかしたら死んだら元の世界に戻れるのであれば今死んだ方が手っ取り早いという考えが頭をよぎるが、死ねば元に戻れる確証など無い。現にさっきの世界からは直通でこの世界に来た。   「あ、あの~……」 「ハッ!聖女様……いや、人違いの女子よ、何か、申してみよ」 「俺……いや私、どうなっちゃうんですかね。というか、ここはどこですか?」 「む……む……いや、今更国の全ての魔力を使用しておいて間違いなどあってはならない。魔導士たちは便宜上罰を与えるわけにはいかないが……、すまない。女子よ。そなたは聖女としての勤めを果たすのだ」 「せ、聖女としての勤め?!」 「この国に恵の日の光と雨を降らし、作物に恵まれ採れた作物によって家畜を育て、豊かな国にする。それが聖女の役割だ。聖女とは、その国にいるだけで国に恵みをもたらす存在なのだ」 「わ、わかりました。そしたら俺……私は、身の安全は保障されるんでしょうか」 「無論、上手くいけばそのように」 「ハイ……」  無理でした。    ビュウウと吹き荒れる嵐に、宮殿の窓から危険なくらいに吹き込んでくる風に髪を靡かせながらフ……と笑う。  もはや笑うしかないからである。    なんと召喚された先の国では既に天候は荒れ、飢餓に見舞われ最後の最終手段として聖女を異世界召喚したらしい。  そういうのは大事をとって余裕を持って行動しておけよ。水晶玉の予知、意味が無いにも程がある件である。    最終兵器聖女として女子高生(推定)に転生した巡は、召喚後宮殿に囲われた後、荒れ狂う豪雨と天日干しの2択を交互に繰り返す天候を諫めることはできず、無力な自分を呪いながら窓から城下町を眺める日々を送っていた。    国は聖女を間違えて召喚したことは公表せず、隠蔽。    巡は偶然の力で一時的にでも天候を治めることを期待されながらも宮殿内にて放置されていた。   「あっ、聖女様!危ない……!」  お付きのメイドたちのキャアアという悲鳴に気が付く間もなく、城下町から嵐で飛んできた剥がれた屋根と窓からぶつかった。  それと同時に、ピカッ。  複雑な術式の魔法陣が巡の足元に現れた。

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