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第3話 3回目の異世界

「勇者様!」 「勇者様が召喚なされた!」 「これでこの世界を守ることができる!」 「勇者様……ああ勇者様!!」  巡はスゥーッと息を吐いて、吸った。   「いや人違いィィ!!」  3度目の正直ならぬ3度目も人違いである。  確実にそうである。    辺りを取り囲む神官たちは、勇者と言ったか。    どこをどう、貧相な運動不足工場勤務の25歳の身体付きを見て勇者だなどと宣うのだ。    勇者と言えば、RPGなどで魔王や世界の瘴気から危機を救う重大なポストのキャラクターである。  通例として筋骨隆々とした出で立ちで銀の装備に身を包み、選ばれし勇者にしか抜けない聖剣を手に世界を救うであろうそれである。    予想通りというか、召喚された目と鼻の先には岩に埋まったおそらく聖剣がそそり立っていた。   「勇者様……今、選ばれし者として聖剣の儀を受けよ」  これを抜けというのだろうか。  抜けるだろうか。  3度目の正直という諺もあるくらいだし、魔法のある世界ならば貧相な体でも魔力さえあれば剣術もチートという世界線の可能性もある。  巡は神官たちに進められるまま、聖剣に手を伸ばした。   「抜けねー!!!!」  やはり転生先は人違いだった。

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