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31 初夜2※R-18

 ジェラルドは、僕のお尻を撫でた。その手つきがいやらしくて、背中が震える。ぞくぞくしながら、ゆっくり、もっと、股を広げた。 「えっちなこと、しよ。ずっと待ってた……」 「うん。俺も」  キスされる。うれしい。お互いの舌を吸いながら、肌を直接感じる。  お互いのにおいが強まって、ずんと身体が重たくなった。どんどん肌が熱くなって、呼吸が浅くなる。 「大丈夫か……?」  ジェラルドの声に、「ん」と頷く。お尻から何かが垂れる感覚があって、変な声が漏れた。  こんなに濡れるなんて、発情期じゃあるまいし。どうやら僕は、ジェラルドを前にすると、ものすごく興奮してしまうらしい。またひとつ、学びがあった。 「濡れてる」  上擦った声で言われて、「ばか」と軽く背中をはたいた。ジェラルドは「ごめん」って平謝りしながら、僕の身体のいたるところを撫でる。  触れ合うところがぴりぴりして、なんでか腰が跳ねる。何かにしがみつきたくて、咄嗟に枕を掴んだ。  手を頭の近くに置いて、肘を上げて、全部をさらけだしている。はずかしいかっこうだ。でもそう気づいたときには、ジェラルドの指が、僕のお尻をたどっていた。 「はいっていい? エリス」  うん、とためらわずに頷いた。ジェラルドの指が、慎重にはいってくる。ゆっくり、ゆっくり、ナカを開かれていった。  僕はすっかりうっとりして、何度もキスをねだった。ジェラルドは、そのたびに応えてくれた。  身体が熱い。茹だるみたいに汗だくになりながら、僕はジェラルドの香りに酔った。  どくん、どくん、と心臓が脈打っている。ずっと、お腹が切ない。  きゅう、と、お腹の奥がうごめいた。熱が上がってくる。ジェラルドの指が、優しく、お腹側を押した。 「あ」  ぱちん、となにかが弾けて、全身がどっと脈打つみたいに血が巡る。ヒートだ。  ジェラルドは顔を真っ赤にして、「エリス」と僕を呼ぶ。指が、ナカから抜けた。その刺激ですら、身体が震える。  スパイスみたいな、甘い香りがして、全身が甘ったるい怠さにひたった。 「噛む、から」  うれしい。初夜で番になれるなんて、思ってもなかった。  僕は自分でころんと身体をひっくり返して、お尻をあげた。膝が、ベッドの上ですべって、ちょっと身体が揺れて心もとない。  ジェラルドが、避妊具をつける音が、どこか遠くに聞こえた。 「きて」  ジェラルドの熱が覆いかぶさる。その熱さと重さに、泣きそうになった。  僕、いまやっと、ジェラルドとセックスしてる。 「いれるぞ」  ゆっくり、僕の身体を、ジェラルドがひらく。大きくて熱いものが、僕のそこにはいってきた。  みちみちと、お腹がよろこびの悲鳴をあげる。きゅんきゅんして、締め付けてしまっているのが自分でも分かった。  どんどん思考がとろけていく。ジェラルドの手が、腰を掴んだ。ちょっと汗で滑って、こころもとない。  ぽたぽたと、背中に水滴が落ちる。彼の汗だろう。僕はぼんやりする頭で、「うごいて」とうめいた。 「は、やく……つがい、に、なろ……」  ずん、と、お腹を突き上げられた。悲鳴をあげると、ジェラルドの唇が耳元へ寄る。 「おれも、はやく、なりたい」  その上擦って、掠れて、余裕のない声といったら。僕は情けない悲鳴をあげて、揺さぶられるままになった。  信じられないくらい気持ちいい。全身が甘く痺れていて、重たくて、でもこの泥沼から抜け出したくない。 「あん、あぅ……っあ、あぁ」  かわいい、と何度も囁かれた。うなじを舐められて腰が跳ねる。ジェラルドにさわられるところ全部きもちいい。あつあつで、溶けてしまいそう。 「ん、かんで、かんで……」  はしたなくお尻を振って、おねだりしてしまう。でもしかたない。ジェラルドがかっこよくて、僕をめろめろにしたのがわるいんだ。 「エリス……」  何度も名前を呼ばれる。もう返事すらできなかった。ジェラルドの名前を呼ぼうとしても、舌がもつれて上手く言えない。心は安心しきっているのに、身体は緊張している。  苦しい。持久走よりつらい。なのに、ずっとこうしていたい。  くう、と腰が反った。気持ちよさが身体の真ん中からずんずん込み上げてきて、肌がぴりぴりする。 「あ、いく、……いく」  僕がうわごとみたいに「いく」って言ったら、腰の動きが早まった。僕は必死で目の前のシーツへしがみついて、その時を待つ。  はやく。はやく噛んで。僕だけの、ジェラルドになって。 「エリス」  耳元で、低い声で囁かれた。目の前が真っ白になって、からだが跳ねる。だけどジェラルドがのしかかってきて、押さえられて、苦しくて、でもしあわせで。  うなじへ、強い衝撃がはしった。  気づくと、僕は、お風呂に入っていた。振り向くと、ジェラルドがいる。膝の間で抱えられているみたいだ。  かっと頬が熱くなる。こんな風に、一緒にお風呂に入るだなんて、全部丸見えじゃないか。まだ、初夜を過ごしたばかりだっていうのに……。 「起きたか?」  穏やかな声でジェラルドが言う。僕は頷いて、膝をかかえた。うなじが、ちょっとひりひりする。 「……番に、なったね」  うなじを撫でる。しみじみと、その喜びを噛みしめた。  まさか、初夜で番になれるなんて、思ってもいなかったから。  でも……。 「ごめんね。新婚旅行、行けなかった……」  そう。僕たちには、新婚旅行の予定があった。それが全部、僕のヒートで、なくなってしまった。  ジェラルドは「大丈夫だ」と、僕の頭を撫でる。 「また、行けばいい」 「うん……そういうことじゃない……」 「はは。そうだな」  甘やかすみたいに抱き寄せられる。僕はされるがままになりながら、その腕に甘えた。  これまでのことを、ちょっと思い出す。オメガは愛される性だって、お父さまとお母さまから、散々言われた。アルファはオメガを守るものだと、お兄さまも言っていた。  だけど自分が結婚して、分かったことがある。というよりは、ジェラルドと番になって、なんとなく、感じた。  オメガだって、誰かを愛せるはずだ。少なくとも僕は、ジェラルドを愛している。  オメガだからって、誰かを守れないわけでも、ないはずだ。僕は、ジェラルドを、ありとあらゆる苦しみから守りたい。幸せになってほしい。  身体の向きを変えて、ジェラルドと向き合った。お互い出すものを全部出しつくしたみたいで、色っぽい雰囲気はない。 「ジェラルド。愛してる」  逞しい腕が伸びてきて、僕を抱きしめた。俺も、と熱っぽくささやかれる。  ちょっと大げさかもしれないけど、生きていてよかったな、と思った。  こんな幸せがきっと、これから先、たくさんあるんだろう。 「エリス……」  ジェラルドが、僕を呼ぶ。 「俺は、お前を尊敬してる。優しくて、勇敢なお前が好きだ」  まったく、聞き飽きた台詞だ。なのに僕は、毎回照れてしまって、顔が熱くなる。  うん、と頷いた。 「僕は、先生になるよ。それで、たくさんの子どもたちに、勉強を教える。勉強を通じて、誰かの役に立つのが、僕の夢だから……」  ジェラルドは、眩しそうに僕を見つめた。なんだか甘えたくなって、その広い胸へと抱きついた。 「無理はするなよ」 「うん。気をつける」  それから、いっぱい他愛のない話をした。  しばらく経って「盛り上がって」しまったのも、新婚だから、許してほしい。

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