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第58話

翌週、自分を限界まで鼓舞し、初の職場へ向かった。 店長さんと改めて挨拶を交わして、ほぼ白紙の履歴書を手渡した。申し訳なさに三回は死ねると思ったけど、彼は本当に優しくて、笑って流してくれた。 店長の境江さんは何も分からない俺に考慮して、単純な掃除や雑務を教えてくれた。頭を使ったのは支出表のチェックだけで、それも最終的には境江さんがチェックすることになる。正直本当にホッとした。 上がる頃に文樹さんがやってきて、エプロンをかけると心配そうに声を掛けてくれた。 「おつかれ。どお? 初勤務は」 「緊張しましたけど、すごく丁寧に教えていただきました。俺でもできる仕事を選んでいただいたので、何とか。ありがとうございます」 「やったじゃん! とにかくこれで、お前は職歴ありだよ! もう心配なし!」 彼は片手を高くかざす。反射的にこちらも片手を上げ、ハイタッチした。 たった一日だし、続いたとしても短期なので何とも言えないけど……彼の気遣いがただ嬉しかった。 本当に、誰もができることしかしてないけど……無事に終わったことに安堵してる。 境江さんにもお礼を言い、初めての仕事は終了した。

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