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結局俺は虐待のPTSDを発症してるとかで薬物治療になった。
最初は心療内科とかメンタルクリニックとかそういうところに行くのが嫌で逃げてたけど、秀悟と瑞希さんが俺を家に一人にするのが心配で仕事にならないとか言うから、仕方なしに行った。
正直ほんとに効果あんのかよって思ってたけど、しっかり効いてるみたいでここ最近はゆっくり寝れてる、と思う。
ゆっくり寝れてるのは薬のおかげなのか、毎晩のセックスのせいなのか微妙っていえば微妙だけど。
付き合ってからの秀悟はとにかく俺に甘い、っていうか過保護。
心配っていう理由から俺の家を引き払ってこの家に住まわせるし、全然電話してこなかったくせに今じゃ暇があればかけてくるし。
嫌じゃないからいいけど。
俺は俺でただ住まわせてもらうのは嫌で、瑞希さんに料理を教えてもらって最近は作ったりしてる。
あんなにたくさんいたセフレ達は断り続けたせいで誰も寄ってこなくなった。
唯一残ったのは俺をハナちゃんと呼ぶ何人かの女の子達だけ。
その子たちとは身体の関係はないし、特に害がないから気にしてない。
たまに秀悟と出会ったあのバーに出向くけど、そんときは秀悟と一緒だし。
はじめて一緒に行ったときは店長から「あら、まとまったの?」なんて言われて恥ずかしかったけど。
それ以外で飲みに行くことはないし。っていうより、薬のんでるから俺はお酒飲まないし。
またあいつの夢見てもいやだし。
***
「ねーぇ、今日はヤんないのー?」
PCに向かって仕事をする秀悟にくっつく。
まるで邪魔だと言わんばかりの冷たい目で俺を見て、ため息。やな感じ。
「ねーってば。」
ノートPCを折りたたんで無理やり視線をこっちに向けさせて、手を握る。
「ヤる気ないの?
…その気にさせてあげよっか?」
くすっと笑って秀悟見る。
「お前な、」
秀悟の冷たい目と低い声。
優しくされるのも好きだけど、強引に抱かれるのが好き。
だからいつも挑発したくなる。
泣きぼくろなんてあるくせに全然泣かない人。
毎晩啼かされてんのは俺か。
「ね、早くベッドいこ?」
はぁ、って大きなため息をつくくせに、初めて会ったときみたいに本当は満更でもないこと知ってるよ。
本当なら俺がちょっと引っ張ったくらいで引き寄せられたりしないって分かってるけど、あえて少し引っ張って俺がベッドに連れ込んだってことにしてあげるね。
本当は押し倒されながら、キスをして指を絡める。
ね、本当はやる気だったんでしょ。
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