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「隼人さん、すっごく良い人。僕、好きになっちゃいそう」
食器を手洗いしながら、比呂はうふふと顔をほころばせていた。
「ううん。すでにもう、好きなんだよね」
でなければ、あんなに張り切って朝食を作ったりはしない。
「好きだな。好きだなぁ、隼人さん」
だが、ふと手を止めた。
瞳に、影が差した。
「でも。隼人さんが、僕を好きになってくれるとは限らないんだよね……」
これまでも、そうだった。
自分がどんなに愛情を注いでも、相手がそれを受け止めて、応えてくれることは少なかったのだ。
「今回もまた、片思いで終わっちゃうのかな」
いや、と比呂は顔を上げた。
「片思いでも、いいから。僕は、隼人さんの喜ぶ顔を見るのが、好き!」
だから、がんばる!
技術の発達した今では、和食器対応型の食洗器もあるが、それでも比呂はていねいに食器を手洗いした。
隼人への愛情を確かめるように、柔らかな布巾で拭いた。
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