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「内臓が、飛び出すかと思った」 「隼人さん、ジムで腹筋だって鍛えてるから大丈夫でしょ」  朝食の席で言い合う、隼人と比呂だ。  しかし、比呂が用意してくれた食事は美味しく、隼人はお代わりまでして食べた。  胚芽米を使った、アサリの炊き込みご飯。  鮭のホイル焼きに、油揚げと人参の胡麻和え。  タコとワカメの酢の物に、ふわふわ卵のかきたま汁。  和の朝食は、長年積み重ねてきた疲労を、癒してくれるかのようだった。 「ごちそうさまでした」 「お粗末様でした」  食後には、薫り高いほうじ茶が出された。  それを、ふうふうと冷まして飲みながら、隼人は料理に対する素直な感想を述べた。 「意外だったな、この朝食は」 「口に合わなかった?」 「いや、とっても美味しかったよ。ただ、和食とは思ってなかったから」  履歴には19歳とあった、比呂だ。  若いので、当然洋食を出してくる、と隼人は思い込んでいたのだ。 「へっへへ、裏をかいたんだよん。でも、隼人さんが洋食の方が好きなら、そっち系にするよ?」 「好き嫌いは無いから、比呂くんに任せるよ」 「承知しました!」  機嫌よく、食器を手にシンクへ向かった比呂を見送り、隼人は我に返った。 「何か……巧く乗せられてる感じだ……」  まるで、もう長いこと同棲生活を積んでいるような。  そんな錯覚に、隼人は陥っていた。

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