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「ネコが好きだよ」
「即答!?」
うん、と隼人は比呂の方に寝返りを打って答えた。
「小さい頃にね、よくネコと遊んだんだ」
両親が俳優の隼人は、幼少期はほとんどベビーシッターの老夫婦に育てられた。
住み込みで働く彼らは、まるで本当の孫のように、隼人を可愛がってくれた。
「爺やが、ネコ好きでね。よくネコを保護してきては、婆やに叱られてたなぁ」
「ふぅん」
婆やが爺やを怒るのは、単に家が散らかるから、といった理由だ。
彼女が、ネコ嫌いだったのではない。
仕方がないわねぇ、などと言いながらも、夫婦でネコを受け入れた。
もちろん室内の掃除は抜かりなく、たまに帰宅する隼人の両親に、ネコの件で叱責されることは無かった。
優しい爺やと婆や、そしてネコたちに囲まれて、隼人は成長したのだ。
「懐かしいな」
「いい話だね」
そうしているうちに、隼人の瞼は自然に重くなってきた。
このまま、眠れそうだ。
「おやすみ、比呂くん」
「おやすみなさい」
夢には、ネコたちが出てきた。
すり寄って甘く鳴く、柔らかなネコの夢を見た。
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