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「……笹山さんから、電話?」  手にしたスマホのコール音は、しつこく鳴り響いている。 「おかしいな。普通、この音で目が覚めないか?」  しかし、世界はそのままだ。  隼人はベッドに腰掛け、隣には事後の比呂が満足げな表情で眠っている。 「とにかく、応答しよう」  隼人が通話を繋ぐと、笹山の大声が響いて来た。 『良かったよ、桐生さん! 動画、面白かったよ!』 「そ、それは、どうも。ありがとうございます」 『特にね、ネコちゃんが登場してから、閲覧数がグンと伸びてね!』 「そうですか……」  そこで隼人は、待てよ、と思った。 (あのネコは、本当に存在したんだ。笹山さんの、この大声は、紛れもない現実だ)  ネコと比呂、入れ替わりに現れては消える記憶が、呼び覚まされた。

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