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「いっそ次の動画は、全編ネコにしてはどうでしょうか……」 『またまた、桐生さん! そう、妬かないで!』  すっかり主役の座をネコに、いや、比呂に奪われてしまった、隼人だ。  少々、複雑な心境だった。 『じゃあ、次の配信は10日後、ということで。内容が決まったら、教えてちょうだい』 「待ってください。スパンが短すぎませんか!?」 『忘れられないうちに、新しい話題を提供しないとね。よろしく!』 「さ……」  笹山さん、と隼人が言い終わる前に、通話は途絶えてしまった。 「はぁ……。全く、憂鬱だな」  溜息をつき、隼人はスマホをベッドサイドに置いた。 「隼人さん、今日の仕事は23時までだけど。晩ごはんは、どうする? 外で済ませちゃう?」  比呂の声に、隼人は我に返った。  見ると、彼はもう衣服を身に着けている。  あれだけ燃えて乱れた様子はすでになく、澄んだ瞳をこちらに向けている。 (やはり、夢……?)  最後の望みをかけて、隼人は比呂に声を掛けた。 「比呂くん、体は大丈夫か?」  何のこと? といった返事を期待していた。

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