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隼人の言葉に自分への気遣いを感じた比呂は、頬を染めて少し目を逸らした。
「ちょっぴり、だるい。隼人さん、凄いんだもん」
動揺する隼人に気づかず、こんなことまで言ってのけた。
「とっても、素敵だったよ。また……抱いてくれる?」
絶句して黙っている隼人を、照れているのかと勘違いした比呂は、さらに突っ込んだことを訊いて来た。
「隼人さんテクニシャンだけど、やっぱり遊び慣れてるの?」
僕の他にも、いろんな人と、いっぱいエッチしたのかな。
声音は明るいが、寂し気な比呂の様子に、隼人は優しく答えた。
「慣れてるわけじゃないよ。役作りのために、練習を積んだだけだ」
「練習? エッチの練習?」
うん、と隼人は両手の指を組んだ。
「ドラマや映画で、ベッドシーンを撮ることもあるからね。そんな時は、風俗の店に行って、プロの手ほどきを受けたんだ」
底知れない、役者としての探求心を、隼人は持っていた。
彼ら彼女らに、体を使った愛情表現を教えてもらったのだ。
しかし、それはあくまでビジネス。
恋人同士のスキンシップからは、ほど遠いものだった。
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