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(隼人さん。お仕事のために、エッチの練習をするなんて)
本当に好きな人と、触れ合ったことはないのだろうか。
比呂は、さらに深く、隼人に訊ねた。
「恋人とか、いなかったの?」
「いた……と言えるのかな。学生の頃の、昔話さ」
日常会話に困らない程度の教養は必要だ、と隼人の両親は、彼をちゃんと学校に通わせていた。
初等部から大学まで、エスカレーターで進学できる、芸能人向けに特化した私学だ。
カリキュラムは、仕事で授業から少し離れても、さほど問題ないように組まれていた。
「その学校で、何度か恋をしたよ。ただ、お互い会える時間が限られていたから、全部自然消滅だったけどね」
気が付くと、指の間から砂のようにすり抜けてしまっていた、儚い恋。
苦い経験を、隼人は繰り返して来た。
遠くを見るような目をする、隼人。
寂しそうなその姿に、比呂は思わずつぶやいた。
「そっか。……僕と、同じだ」
比呂の声は小さかったが、隼人の耳はそれを聞き落さなかった。
そして、首を傾げた。
「僕と同じ、って。比呂くんも、そんな恋をしてきたのかい?」
「うん。僕の場合は、自然消滅っていうより、自分からそっと離れて行ったんだけど……」
少し湿った空気を吹き飛ばすように、比呂は無理に明るく語り始めた。
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