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「今、何と言った。100年くらい生きているのか、お前は!?」
「え!? あ、しまった!」
素直な比呂の性格が、裏目に出てしまった形だ。
じりじりと、紫織が近寄って来た。
「ただのハウスキーパーじゃないな、お前は。正体を現せ」
「うぅ……」
正直、ヒトの姿の時より威圧感のある、クロヒョウのような紫織だ。
それこそ、まるっと食べられてしまうかもしれない。
仕方なく比呂は、あやかしの姿に変化した。
小さなサビ猫の姿を、さらして見せた。
「何だと!? お前が、あの動画に映り込んでいた、小汚いネコ!?」
「ニャア! ニャニャアァ!」
残念ながら、いくら文句を言っても、ネコの比呂は人語を話せない。
すぐにヒトの姿に戻り、紫織に不平不満をぶちまけた。
「小汚くて、悪かったですね! それより、早くヒトになって、家事を手伝ってよ!」
忙しいんだから、全くもう!
こんな風に、まるで動じない比呂に、紫織は返って愉快になった。
「面白い奴だな」
「あぁ、忙しい。忙しい!」
すでに彼を無視して、食器を片付け始めた比呂だ。
「この後、バスルームを温めて。それから、ベッドメイキングをして……」
比呂の心を占めるのは、隼人なのだから。
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