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相変わらずの故郷を眺め、紫織は複雑な心境だった。
安心したような、呆れたような。
「あの頃と変わらない、たって。変わらなさすぎだろ、これは」
しいて上げれば、港の護岸が少しだけ整備された、くらいか。
そして、これまた木戸がアルミサッシに代わっただけの、懐かしい小さな食堂へ入った。
ふぅふぅと、きつねうどんを食べながら、紫織は語った。
「英介さんに救われてから、俺は何とかここへ帰ることができたんだ」
荒れ果てた街中にいるより、田舎の方がましかもしれない。
そう考えての、帰郷だった。
戦後というのに、この小さな離島は、のどかだった。
国からの厳しい言動規制はさほどなく、空襲も受けずに済んだ、いたって平和な光景を紫織は見た。
古くから半農半漁で、ほぼ自給自足ができているため、飢えの苦しみもそこには無かった。
「もちろん、ネコを取って食おう、なんて奴もいなかった。この島には、猫神神社もあるしな」
「ホント!? 僕、うどん食べたら神社へ行きたいな!」
「ああ。案内するよ」
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