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 紫織の案内で訪れた猫神神社は、とても小さく古びていた。  背の低い鳥居のすぐ向こうに、木造の祠がある。  だがそこには、まだ瑞々しい生花が供えてあり、人々の確かな信仰を示していた。 「昔、この辺り一帯から、遺跡が見つかったんだ」  それは約2000年前のもので、40基の墓と40体の人骨、多数の副葬品が出土した。 「人骨の傍に、ネコの骨も見つかってな。それで猫神信仰が根付いたらしい」 「心からネコを信じなさい、だね!」 「それは『神』の字の改ざんだろ。画像コラージュだろ」  ドツキ漫才を始めた比呂と紫織をなだめ、隼人は財布を取り出した。 「まずは、お参りさせてもらおう。比呂くん、はい100円」 「ありがとう、隼人さん!」  小さな祠の前には、これまた小さな賽銭箱がある。  それでも、その傍らには鈴緒が垂れており、ちゃんと鈴を鳴らせるようになっていた。 「猫神様ぁー!」 「ひ、比呂くん。そんなに鈴緒を振り回したら……!」 「ぎゃッ!」  激しい比呂の参拝に、鈴が紫織の頭上に落ちてきた。 「比呂! てめぇ!」 「ごめん! 謝ってるから! ごめんね、って言ってるから!」  追いかけっこを始める紫織と比呂は、まさにネコそのものだ。  怒っていたはずの紫織も、終いには笑いながら比呂を捕まえようとしている。  微笑ましい光景に、隼人はこの旅に出て良かったと、心から感じていた。

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