189 / 229
4
通話を終えると、隼人の傍には比呂がいた。
笹山の大声は、スマホを手にしていない彼の耳にも、漏れ聞こえていたのだ。
「大丈夫かなぁ? 隼人さん。笹山さんに、ちゃんと説明しなきゃ」
「紫織さんの一件は、顔を合わせてから少しずつ伝えるよ」
「実は猫又でした、って?」
「さすがにそれは、巧くごまかすしかないな」
二人で笑った後、隼人は両腕を上げて大きく伸びをした。
「さぁ、新たなステージへ突入だ!」
「張り切ってるね、隼人さん!」
「私は、俳優として頑張る。そして比呂くんは、猫神様になれるように頑張る!」
「おー!」
元気よく応えた比呂は、隼人が脱いだブレザーを受け取った。
「バスタブに、お湯張ったから。まずは、お風呂で疲れを取ってね」
「ありがとう、比呂くん」
バスルームへと向かった隼人を見送り、比呂は彼の衣類を整え始めた。
「これは、クリーニングに出して。こっちは、洗濯機。これは手洗い、っと」
ふと、手が止まった。
「隼人さん……」
『私は、俳優として頑張る。そして比呂くんは、猫神様になれるように頑張る!』
「僕は、猫神様になれるように、か」
できるかな?
僕は、これからも。
今まで通り、猫神様を目指せるのかな?
紫織と共に過ごし、彼の苦悩や喜びを間近で見てきた比呂に、迷いが生まれていた。
ともだちにシェアしよう!

