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「では明日、事務所でお会いしましょう」 『調子が悪かったら、休んでもいいからね?』 「大丈夫です。やる気に満ちてますよ」  しっかりと受け答えする隼人に、笹山はようやく落ち着いたようだった。  そこで、最重要の案件を、小出しにしてきた。 『青原監督の、最終オーディションなんだけど』 「ああ、私は欠席してしまいましたね。ちょっと、惜しかったなぁ」 『それが、ね。ぜひ個人的に会いたい、って言ってくださって』 「本当ですか? しかし、なぜ……」  青原は、誇り高い男だ。  最終選考をすっぽかすような俳優には、怒り心頭だろうに。  笹山も、首を傾げているようだった。 『とにかく、桐生さんが復帰しました、ってお伝えしてもいいかな?』 「はい。よろしくお願いします」  後は、二言三言交わして、隼人は通話を終えようとした。  ところが、その直前に、笹山が紫織について話し始めたのだ。 『隼人さんに無礼千万だった、あの吉永ってライター。覚えてる?』 「あぁ、はい」 『一緒にすき焼きパーティーした後、すぐに出版社を辞職したらしいよ!』 「そうですね」  実は彼も、この一ヶ月間、行動を共にした。  隼人がそう打ち明けると、笹山の混乱は頂点に達した。

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