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「隼人さん、ちょっといい?」  ドアの隙間から、比呂が顔をのぞかせている。  名前を呼んだタイミングで現れるなんて、と隼人は笑顔になった。 「どうかした? 今ちょうど、比呂くんのことを考えていたんだ」 「うん。あの、ね。僕も一緒に、お風呂使ってもいいかな?」  それは嬉しいお願いだ。  隼人がすぐに快諾すると、比呂はそのままドアを滑らせ、浴室に入って来た。  すでに素裸の彼は、ソープを手にしてシャワーを浴び始めた。 (どこか、妙だな)  隼人は、やけに静かな比呂に、違和感を覚えた。  いつも元気で、朗らかな空気を纏っている、比呂くん。  そんな彼が、沈んだ表情を見せている。  慌ただしく体と髪を洗い終えた比呂は、隼人が浸かっているバスタブに身を沈めてきた。 「早かったなぁ、比呂くん。ちゃんと、きれいになった?」 「隼人さんと一緒に、湯船に浸かりたかったんだ」 「また、お風呂エッチするかい?」 「ヤだなぁ。隼人さん、そんなにお風呂でするのが好きなの?」  ようやく比呂は笑顔を見せてくれたが、やはりいつもの張りが無い。  隼人は、そんな比呂の背後に回り、後ろから彼を抱きしめた。

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