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 比呂くんらしくない、と隼人は考えたが、それは口に出さなかった。 (確かに、いつもの比呂くんではないけれど。こんな一面も、彼は持っていたんだ)  常に明朗快活な振る舞いを、彼に望むのは間違っている。  こんな風に、沈みたい時だってあるはずだ。 (それにしても……うなだれる比呂くん、艶があるなぁ)  気が付くと、その白いうなじが目の前にある。  洗い髪の後れ毛が少し貼り付き、匂い立つような色香が映える。 (いかん。……勃ってきた)  隼人の中心は熱く充血し、比呂の柔肌を圧迫し始めた。 「隼人さん」 「な、何かな?」 「なんか、当たってるんだけど」 「そう? ……うん、そうだね」  こうなってしまった以上、下手なごまかしは逆にカッコ悪いというものだ。  比呂のうなじに軽く唇を当て、隼人は彼の耳元でささやいた。 「ちょっぴり元気のない比呂くんも、素敵だよ」  その一言は、今の比呂には強い効果があった。 (隼人さん。どんな僕でも、肯定してくれるんだね。受け止めてくれるんだね)  悲しい涙が、嬉し涙に変わった。

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