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 一通りの説明を聞いた後、青原は眼鏡に手をやった。 「桐生くんは、嘘をついてはいない。だが、本当のことを言ってもいないね?」 「えっ」  そこで青原が、眼鏡をはずした。  その目に射られ、隼人は一瞬、我を見失った。 (さすが、青原監督。噂通りの眼力だ)  ただ青原は、脅しで人を動かすような男ではなかった。  すぐに穏やかな初老の紳士に戻ると、身を乗り出した。 「もっと詳しく、細部まで語って欲しい。君のおじいさんから、何を聞いたのか。そして、ひいおじいさんは、どんな人生を送ったのか」  隼人は、返答に困った。 (それを細かに話すには、比呂くんと紫織さんの存在が不可欠だ)  だが、目の前にいるのは、常人ではない。  世界にその名を轟かせる、青原 繁だ。  独自の世界観で多くの映画を創ってきた、クリエイターだ。 (もしかすると、私の告白を真正面から受け止めてくれるかもしれない)  そんな思いが沸き上がり、隼人は腹をくくった。 「少し、長くなると思いますが。よろしいですか?」 「いいとも。ぜひ、聞きたい」  実は、と隼人は青原に、真相を語り始めた。  

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