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 隼人は、ひたすら語った。  その身に起きた、全てを。  比呂と紫織のことを、そして関わった人々のことを、隠さず全て語りつくした。  それを聞いている青原は、真剣だった。  嘲りの笑いも、疑いの眼差しも無く、相槌を打ちながら黙って受け止めてくれた。 「……これが、私の一ヶ月間で体験した、全てです」 「うん。ありがとう」  何と壮大なドキュメンタリーだ。  そう言って、青原は傍らの茶碗に手を伸ばした。 「つい、聞き入ってしまった。喉がカラカラだよ」  すっかり冷めた緑茶を、青原は一息に干した。  そんな彼に、隼人は自然と頭を下げていた。 「青原さん、ありがとうございます」 「ぅん?」 「私の奇異な話を、あなたは最後まで真剣に聞いてくださいました」  少し心が軽くなった、と隼人は良い顔つきをしている。 「真剣な話は、真剣に聞く。それが礼儀だと、私は考えているよ」  ただ、少々心配事もできた、と青原は茶碗を茶托に置いた。

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