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 隼人の電話から、約40分後。  比呂は、かしこまって青原の前にいた。 「は、初めまして。安達 比呂です。隼人さんのマンションで、ハウスキーパーをやってます」 「来てくれて、ありがとう。私は、青原 繁だ」  青原は、自然な所作で比呂に腕を伸ばした。 (親愛の握手を、ってことだよね。きっと)  もっと怖い人だと思ってたけど、なかなかフレンドリーじゃん。  そんな風に、比呂の表情から、こわばりが消えた。  そして喜んで腕を伸ばし、青原の手を握った。  だが、その途端、電流のような衝撃が、比呂の身に走ったのだ。 「ふぁッ!?」 「どうした、比呂くん!」 「び、ビックリした!」  それでも比呂は、青原の手を離さなかった。  彼の手から、抗いがたいエネルギーを感じる。  そしてそれは、嫌なものではないのだ。 「何だか、ぽかぽかする。ハートが、あったかくなるんだよ。隼人さん」 「青原さんの手で、かい?」  不思議そうな比呂と隼人の視線を受け止め、青原は片目を閉じてニコッと笑った。 「私はヒトに姿を変えているが、その正体はネコのあやかし・猫神なんだよ」 「えぇえッ!?」 「ウソぉお!?」  青原は、隼人と比呂の前に、まさかの展開を見せてきた。

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