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『定休日』
そう書かれたプレートがドアに掛けられ、時折風に揺れている。
比呂は、ものすごく落ち込んだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
彼は、店休日をチェックすることを、すっかり忘れていたのだ。
「比呂くん、大丈夫だよ」
「そうそう、気にしない」
隼人と青原に優しく慰められれば、それだけ罪悪感が増す、比呂だ。
それを感じ取った隼人は、青原を自宅へと誘ってみた。
「青原さん。もしお時間があれば、私のマンションでお好み焼きを食べませんか?」
「いいのかね?」
「はい。食材を買って、みんなで焼きながら食べましょう。比呂くん、これでどうかな?」
隼人の提案に、比呂はうなだれた頭を、起こした。
「ありがとう、隼人さん。そうしても、いい?」
決まりだ、と青原が明るい大声を上げた。
「お好み焼きを、自分で焼きながら食べるなんて、久しぶりだよ!」
だが青原は、今度は隼人を気遣った。
「桐生さんは、いいのかな? スケジュールが詰まっているのでは?」
「ご心配には及びません。休業開けということで、マネージャーが仕事を調整してくれました」
隼人のチーフマネージャー・笹山は、密かに責任を感じていた。
自分が隼人に無理をさせ過ぎて、今回の長期休暇に繋がった、と悔いているのだ。
「午後は、丸ごと空いているんです。ゆっくりできますよ」
「そうか。では、遠慮なくお邪魔しようかな」
「比呂くんが整えてくれている住まいを、ぜひご覧ください」
誇らしげに、隼人は言った。
その言葉に、比呂は嬉し涙がこぼれそうだ。
「うう。ありがとう、隼人さん。僕、嬉しいよ……」
そんな彼の背中を押して、隼人は車へといざなった。
二人の様子に、青原はやはり、笑顔だった。
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