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隼人と比呂、そして青原は、三人で映画上映終了の祝宴を、ささやかに開いていた。
関係者たちでの大々的なパーティーは済ませたが、隼人がぜひにと自宅マンションに青原を招いたのだ。
温かな鍋料理を囲んで、祝杯を交わす。
すでにヒトの年齢で20歳を過ぎた比呂も、お酌をするだけでなく、自分も美酒を楽しんでいる。
三人ともほろ酔い加減になった頃、青原が手酌をしながら言った。
「しかし。桐生さんが、撮影現場からの動画配信をしたい、と言い出した時には参ったよ」
「青原さんだって、比呂くんを映画に使いたい、なんて言い出したじゃないですか」
私は、お返しをしただけです、と隼人は知らぬ顔だ。
隼人は、芸能生活25周年の節目に始めた、日常生活の動画配信サービスを忘れてはいなかった。
マネージャー・笹山が、無理やりに始めたようなイベントだが、おかげで比呂に出会えたのだ。
たった一回きりで止めるつもりは、なかった。
映画の宣伝にもなる、と青原を説き伏せ、撮影の合間に隼人は動画を撮った。
『皆さん、こんにちは。今回は、衣装担当の道下さんと一緒です!』
『イェーイ! 戦前、戦中、戦後の衣装デザインは、死ぬほど大変ですー!』
『道下さんは、布の質感まで再現する、こだわり派なんですよね』
『はーい! 現在では、もう作られていない生地もあるので、面倒くさいですー!』
なにせ、青原の仲間である。
道下もまた、あやかしである。
当然、100年前ほどの過去ならば記憶にあるので、こだわりも強い。
そんな個性的なスタッフに囲まれて、隼人はほぼ丸一年を映画撮影に費やした。
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