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第6話 ポツンと別荘に行く

卒業後、家族で結婚式を行い、しばらくは引っ越し作業で追われた。 毎日くたくたになって、夜はくったくたで寝て、セックスどころじゃない。 ようやく一息着いた頃、水城が思い立ったように本棚に本をみっちり入れ終わり、ふと一冊の本をパラパラめくって本棚の奥に戻し、空のダンボールをボンと蹴った。 「よし、気分転換に別荘行こう」 「別荘?あるの?」 「うん、家族ラインで聞いたらあいてるって。とりあえず一週間キープした。 買い出しして3,4日行ってこよ」 「マジ?!行く行く!」 と、言うわけで、僕らは車で出かけることにした。 堂々と2人で車に乗って出かける、その行為が何だか新鮮だ。 終わってない片付けは、忘れることにする。 「後ろに乗って」 「えーなんで?」 「いいからさ」 他の家族も乗れるように大きい新車を買って、後ろのシートを倒せばキャンプも出来る。 別荘の近くには店が無いと言うので、沢山食料買い込んできた。 明日辺りは庭でバーベキュー!楽しみだし、近くの山には竹の子掘りにも行こうって。 凄い凄い、楽しみがいっぱい! 心躍らせてると、彼が車を走らせながら、後ろを指さす。 「そこのバッグ、服入ってるから着替えて」 「えー、今着替えたバッカだって」 「いいから、ズラも入ってる」 ボストンバッグのファスナーを開くと、中から黒いワンピースが出てきた。 「マジ?」 「まあ、たまにはシチュエーション変えて楽しむのもいいんじゃない?」 「やだよ、きっと変態になる」 「きっと、可愛いよ。選ぶの楽しかったし」 「やっぱ、水城は女の子がいいんだ?」 「何言ってんの、今更。だって買い物中、何回親子に間違われたよ。 先生は大変傷つきました。 一度でいいからご夫婦ですか?と言われたい」 走る車の中、後部座席の窓はキャンプにもいいようにブラックのフィルムが貼ってある。 僕は、彼の言う通りに服を着替え始めた。 「ねえ、もういい加減にさ、セックスしない?」 「どうしようかなあ〜、僕は運転で疲れちゃうし」 「なに爺さんみたいな事」 「もうこの時間だし、今日は遅くに着くから、スパゲッティでも作ろう。ピザも一枚焼いていいな〜」 僕は大きくため息を付いて、服を着替え、カツラをかぶると着ていた服を畳んでバッグに入れた。 「なにこの服、これじゃ夫婦になんか見えるわけ無いじゃん。援交だよ、また警察来ても知らないんだから」 「へっへー」 しばらく走って人通りの無い場所で車を止め、助手席に移る。 僕の姿を見た水城が、口笛を吹いて首を振った。 「やっぱり君には黒いドレスが似合う。 そう言うの、ゴスロリって言うんだって。 前の学校でそう言う服好きな女子学生がいてね、麻都に似合いそうだなって思ったんだ。 ははっ、君に告白される前だよ?」 「なんだよ、それ」 「つまり、僕はすでに君に恋をしてたって事さ」 僕の顔がボッと燃え上がり、ドスンと脇腹に拳を入れた。 「いたた、だって君とのホテルでのあの一夜、僕はあれがずっと忘れられない。 おかげで僕は君を抱いてる夢ばかり見るようになったよ」 「じゃあ!抱いてよ!もう!!! もう!もう!なんで?そんなにガマンしてんの?! もう結婚して4日だよ?!3年と4日ーっ!!」 「ガマンしたから結婚出来ただろ? それにもう毎日忙しくて、そんな気分になれないじゃない。 あの箱だらけの部屋で、セックスする気も起きないよ」 「いいもん、バイブでガマンするから」 「バイブねえ、ほんとお前っていじらしくて可愛いよな」 信号で止まると、僕を抱き寄せチュッとキスする。 偶然横を通った女子学生が、キャーーーと悲鳴を上げてた。 マジ勘弁してよ。 もう日が落ちて夕日に照らされる中、車はどんどん山の方へ走る。 「すっげー山の中」 着いた別荘は、家族で予約して使う感じで、普通にデカい別荘だった。 ただ、場所がマジでポツンと一軒家だ。 周りは山で何もない。 雑木林だから、スギ花粉は少ないらしい。 「鷹が巣を作るんだ。 時々人を雇って下草刈りと枝払いするからあんまり山が荒れてないだろ? オヤジはこの山が好きでさ」 「え?誰の山だって?」 「オヤジの私有地」 「マジかよ」 俺はとんでもない奴と結婚した。 中に荷物を入れて、部屋を見て回る。 なんと、寝室にはキングベッドだ。 しかも、シーツの下には防水シートが敷いてあるうう!! これ、まさにセックス目的だろ。そうだろ! そう言えば今どき子供多いよなー お兄さんちもお姉さんちも。ボロッボロ生まれるだろ、これ。 子作り環境があるってスゲー 「凄いだろ、でっかいベッド。もう一つあるんだぜ?向こうの部屋。 ケンカしたら、離れて寝る用だってさ。 夏休みはみんな順に子供連れてここを使うから、僕らはハネムーンでハワイの別荘行こう」 「いくつあんの?別荘」 「3つかな、1軒はハワイ、もう1軒はクマにやられて工事中」 「クマ?!」 「にー兄がバーベキューやって後片付け不十分でやられたの。 にー兄は猟銃持ってるからクマは仕留めたけど、台所壊された」 やっぱ山中かよ。どんだけ山が好きなんだよ。あのオヤジ。 しかし、せっかく女装してヒラヒラさせても、水城は全然いやらしいことしてこない。 Tバック見て、めっちゃ笑われたんだけど、笑うとこじゃないだろ。 立てろよチンチン。 「ねえねえ水城、見て」 ご飯食べたあと、僕は誘ってみることにする。 ソファに座って、向かい合う水城に向かってスカートの裾上げた。 するすると、合わせた膝の頭が見えてくる。 「んー、まだ女の子の足ッぽいよな」 うふふふふ、するする上げて、太腿の内側に手を入れ、手を滑らせながら更に足を開いた。 Tバックで、股間は相当きわどいはずだ。 水城はそれを、じいっと見てる。 さあ、立て!立つんだ!水城! 「あ、お風呂入ろっか。もうお湯たまっただろ」 スッと何ごとも無く立ち上がった。 ああああああああああああああ!!! 何だよこいつ! 何の為に女装させたんだよおおお!! ジタバタ地団駄踏む麻都をあとにして、風呂場でキュッとお湯を止めて水城がうなだれ、ふうううぅぅぅと落ち着けるように息を吐く。 「股間がヤバかった……」 息つく彼だが、すでに時限爆弾のスイッチは入っていた。

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