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2-4はじめてのヒート(H描写あり)

 ジアルが今使っている魔法は、ロカロと接点があった男のほうを追うものだ。  コノカの登場は男を殴るその一瞬で終わった。  その次に映ったのは捕まった男のその後だ。  α囚人棟のとある個室に入れられ、彼がその部屋の主に弄ばれ続ける映像だった。  体調がすぐれないのか、男は牢に入れられた時に少しふらついていた。  囚人に触られまいと激しく抵抗していたが、押さえつけられ無理矢理挿入された途端、まるで別の生き物になったように腰を振って善がり始めたのだ。  映像を見てシシオは固まった。  前の世界で先輩たちに『オメガ顔』と呼ばれた例の後輩が呼び出される度されていた事、一度偶然その場に居合わせて以来忘れようとしていたその内容が、脳裏によみがえっていた。  その後輩はこの男のように腰を振ってなかったが、犯している囚人の笑い顔が先輩達にそっくりだった。 「ああ、これは。彼はヒートを起こしているな」 緊張感のない声でジアルが言った。 「この人は強めに出ているようだけど、ヒートになるとこれに近い感じになるから一応参考に見ておくと良い。正気ではやらないような行動をしても全てはヒートのせいで、後で君が恥じることはないからね」 何言ってんだ、こいつ。  吐きそうになりながらシシオはジアルを見た。  非難がこもった視線を正面から受けても首を傾げて、ああそうだ、と彼はさらに言った。 「自覚症状はまだ無いかい?実は数日前から微量のフェロモンが君から出始めていて。一応制御魔法でフェロモンの放出は止めているんだけど、遅くても数日のうちに本格的なヒートが来ると思うよ。そうなると僕の魔法でも止められ………シシ?」 シシオの心境には鈍感だが、体の変化には目ざとく気がついて、ジアルは彼の肩に触ろうとした。 「さ、触るなっ」 シシオは怒鳴ってジアルの手を払い、長椅子から立ち上がった。  鏡の恐ろしい映像を見てから、再び体の奥で熱が跳ね始めていた。  今度は治まる事無く、ずっとだ。  汗がにじんで顔が火照ってくる。  何かがうずうずと体の中を這い回るようだ。  制御しきれなくなったフェロモンを嗅いで、ジアルは自分の鼻に手を当てた。 「映像が引き金になったかな」 指でついついと紋を描き部屋全体に魔法をかける。  フェロモン漏れ封じと防音効果だ。 「兄上の薬を少し当てにしたけど、今回は無いし。僕の魔法が効いていて今の状態だからね。ヒートが終わるまで薬無しで耐えるのは相当つらいから、ひとまず応急処置をしようか」  「処置ってなんだよ?やだ!来るなって!やだって!あんなの絶対やだ!」 怒鳴って後ずさるシシオに、ジアルは「落ち着きなさい」と言いながら手を軽くたたいた。  同時に部屋の中が暗転し、床が消えた。  落下する感覚に悲鳴を上げかけたが、その前にすぐ体が床にぶつかる。硬く冷たい。  どことも無くぼんやりと明かりがともると、そこはジアルの部屋ではなく四方が石壁の牢獄だった。  その一角にある大きな陰を見て、シシオは今度こそ悲鳴を上げた。  陰に見えたものは赤黒い固まりだった。  それはシシオの背の倍はある大きな芋虫のように見えた。ぐじゅぐじゅと音をたて蠢いている。 「なっ……なん、これ」 腰がぬけて、へたり込んだまま立ち上がれない。  そいつはシシオを認識すると、明らかに彼の方へと動き始めた。  動きながら生々しい音を立てて変形してゆく。  芋虫の背が裂け、みちみちと肉がむき出されて、その肉はグロテスクな色をした生殖器の形となった。 「人相手が嫌なら淫蟲という手がある。感情のやり取りが無いし道具だと思えば、人外の方が気が楽かもしれないね」 どこからともなくジアルの声が聞こえた。  何を言ってるんだこいつ。  いったい何を言ってるんだ、こいつ。  体の上に覆い被さってきた淫蟲を押し返そうとしながらシシオは叫び声を上げた。  粘膜まみれの肉の塊がシシオの足を割り開いてゆく。 「やだ、やだ!こんなのやだああああああああああああああああ」 泣きながら絶叫すると、同時に体にかかっていた重みがふっと消えた。  背中の石床の感覚も消え、またトンと何処かに落ちた。  今度は堅くない。  こわごわ目を開く。見覚えのある天井だ。  ジアルの寝台の上に横たわっていた。 「ニ択だよ。シシ」 ジアルが隣に座っている。  そう問いながらも羽織を脱ぎ、眼鏡を外していた。  黙っていれば穏やかそうな目の奥がゆらゆらと高揚している。  シシオはその顔を放心したまま見つめながら、首を振った。 「さっきのは、やだ……あれ、やだ。あんな、あんなの、やだ……」 しゃくりあげながら言うシシオを見て、ジアルは「そう」と答えて唇の端をなめた。  口付けられ衣を解かれても、シシオはもう抵抗しなかった。  それほど淫蟲の幻影に衝撃をうけていた。  首や胸を吸われ、指でなぞられ、性器に触れられ後孔に指先を入れられても、シシオは泣いたままでぼんやりとした表情を変えなかった。  愛撫されるたび体は震え、小さなせつない溜息は漏れる。体は素直に反応しているが、頭がついて行けていないのだ。  三本目の指を入れながら、ジアルはこれまで覚えたことがない興奮とせめぎ合っていた。  今まで何度かΩのフェロモンを嗅いだことはあるが、どれもあまりいい匂いはしなかった。  興味が無かったらΩのフェロモンも所詮こんな物かと思っていたのに、今その価値観が大きく動かされている。  今すぐ自分の物をシシオの中に突き立てたい衝動に駆られるが、それを堪えて避妊効果のある軟膏を彼の後孔に塗り込んだ。  突然ぬるりとした物を入れられて、シシオが身をよじらせる。  抵抗しているのではなく、やはり体が反応しているだけのようだった。 「シシ……ごめんよ」 つぶやいたがその言葉がシシオに届いたかどうか。  大きく割り開かせたシシオの足の間、ヒートでうっすら熟れた色に染まっている小さなそこに、ジアルは先をあてがい、ゆっくりと腰を埋めていった。  シシオの体がきつく仰け反った。 「ッ…………」 ジアルのものに、シシオを裂くめりめりとした感触が伝わる。  シシオの表情は相変わらず虚ろだが、 内壁がひきつりジアルのものを締めあげる。  ヒートのためか、初めてでも痛みより別の感覚の方ががわずかに勝っているようだ。  そのまましばし抱きしめあって形をならした後、ジアルは少しずつ腰をゆすりはじめる。  くちゅくちゅと粘度のある水音がした。シシオの中からも腸液が滲みでてきているようだ。 「あ……あ………ぁ……」 突かれる度にこぼれる喘ぎ声は無感情で、時折まだぽろぽろと涙をこぼす。  ジアルは腰を繋げたままシシオを抱き起こした。  体重分ジアルの物が根本までシシオの中に入る。 「あ゛ッ……ぁぐ……」 ジアルの膝の上でのけぞり、シシオはようやく初めて仄かな恍惚で頬を染めた。 「シシ……シシ。Ωは精液を摂取するとヒートが一日以上収まる。さっき避妊薬は入れたから、ね」 耳元でジアルが囁く。  シシオは泣きながら小さく頷いた。 「いい子だね。……ああ、シシは本当にいい匂いだ」 うっとりとした声でそう言って、ジアルはシシオを突き上げ始めた。  どぷり、と中に注がれたものを感じて、シシオは閉じていた目蓋を開いた。  ジアルに何度も突かれた感覚だけがあったが、見ればシシオ自身も何回かすでに達していたらしく、腹から股間にかけてぐっしょりと濡れていた。 「え、え………?」 記憶になくて顔が火照る。 「恥じなくていいよ」 熱を帯びたシシオの頬にジアルが触れた。  そのジアルの頬も目の周りも赤い。 「や、恥じって、俺何し……」 「大層可愛かったよ。また見たい」  シシオをうつ伏せにして再び挿入しながら、ジアルは彼の首の後ろに何度も口付けをしたり舌を這わせたりした。 「うぁ、あ……」 再度、中に打ち込まれ、その質量を感じて声が漏れる。  また、うなじへの愛撫が何故か異様に気持ちよくて、シシオはそこへもっと何かをして欲しくなった。  内壁を引きつらせながらシシオが振り向くと、ジアルは自分の片手に噛み付いていた。  その熱っぽいジアルの目を見つめて、 「……ここ」 シシオは自分の首の後ろに触れてねだった。 「な。ここ、噛んで」  首の後ろを噛まれることの意味は知らなかった。  ただ自分の手を噛むジアルの歯がとても気持ちよさそうに見えたのだ。   ジアルはたまらないような顔になりンッと小さく呻いたが、首を横に振った。  そして噛んでいた手をシシオのうなじに被せた。 「だめ……だめ。それは後で話そう」 言って、腰の動きを早める。 「や、や、あ………ぁあ、っあ………んッ……んんッッ……………!!!」 中を激しく擦られて、いつの間にか把握されていた悦い所を何度も責め立てられる。  きっと先程までも同じようにされていたのに、ちゃんと意識を保っている今、初めて全身で快感を感じた。  意思に関係なく腹の奥と腰がびくびくとはね、シシオの記憶はそこでまた途切れた。

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