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【事件記録XXXX-6】
記録日時:██年██月██日
関係者:
田中(仮名) - ███株式会社 ██支社 チーフマネージャー(当時)
河野(対象者A) - ██年██月██日 自殺未遂後、入院を経て復帰
河野(対象者B) - ██年██月██日より勤務(当日以降、確認されず)
[記録:██年██月██日 夕刻]
対象者Bへの抵抗と、田中への報復
██年██月██日夕刻、田中は対象者Bによって何らかの強要を受けたと推測されている。
田中は逃れようとした際、誤って対象者Bの左頬に五センチ程度の傷を負わせたことが確認されている。
[監視カメラ記録:会議室内 17時33分]
[映像開始]
田中が机の端に追い詰められる。
対象者Bが田中の肩を抑え、顔を覗き込む。
田中が身を捩るようにして避けようとした瞬間、対象者Bの顔に引っかかる形で爪が食い込む。
対象者Bの表情が一瞬だけ歪むが、すぐに穏やかに微笑む。
田中の手が震え、ゆっくりと後ずさる。
対象者Bが田中の肩を撫で、耳元に唇を寄せる。
対象者Bが何かを囁く。音声は記録されていない。
田中が硬直し、視線を伏せる。
対象者Bが田中の髪を指で梳くように撫で、微かに笑う。
[映像終了]
[同僚の証言]
「その日を境に、██(田中)さんの様子が明らかにおかしくなりました」
「話しかけても、██(河野)の方を気にしているのが分かるんです」
「まるで██(河野)の許可がないと話せないみたいに」
田中は「相応の報いを受けた」とだけ言葉を残している。
詳細は不明だが、翌日から田中の様子は極端に変化し、以下の異常行動が見られるようになった。
・会話の頻度が激減し、目を合わせなくなる
・業務中の集中力の低下
・頻繁に腹部の違和感を訴える
・業務時間中に何度もトイレへ向かおうとするが、その都度対象者Bに阻止される場面が目撃される
[同僚の証言]
「██(田中)さんがトイレに行こうとしたら、██(河野)が笑いながら『あともう少し我慢できますよね?』って言ってた」
「██(田中)さん、顔色が明らかに悪くて……でも何も言えなかったみたいだった」
[推定される対象者Bの行為]
詳細な行為の記録は存在しないが、対象者Bは田中に対し「徹底的な支配」を示すためのペナルティを課したと推測される。
・田中が「自身の身体の自由を完全に奪われた」と認識させられた可能性
・田中にとって「極度の羞恥と無力感」を伴う状況が強要された可能性
・田中が以降、抵抗する気力すらなくなったことから「逃げられない」と精神的に刷り込まれた可能性
[記録:██年██月██日]
対象者Aの復帰と異常の発現
██年██月██日 10時05分、河野(対象者A)が職場へ復帰。
[監視カメラ記録 10時05分]
通常通りオフィスに入る対象者A。
同僚から「おはよう」と声をかけられるが、対象者Aは落ち着きのない様子を見せる。
対象者Bが座っていたデスクに対象者Aは座る。
周囲の社員はこれを通常の出社として認識しており、特に違和感を抱く者はいなかった。
しかし田中のみが、この〝河野〟の存在に対し明確な異常を認識した。
対象者Aの左頬には、前日田中が対象者Bに残したはずの爪痕が存在していなかった。
[記録:██年██月██日]
田中の異変と対象者Aの疑問
[監視カメラ記録 10時15分]
田中が対象者Aの顔を注視している。
周囲の社員が会話を続ける中、田中だけが沈黙を保つ。
田中が小さく息を呑む。
対象者Aが田中の視線に気付き、明らかに苛立った様子を見せる。
[監視カメラ音声記録 10時18分]
対象者A:「██(田中)さん」
田中:「あっああ、どうした?」
対象者A:「██(田中)さん……俺が入院している間、一度も見舞いに来ませんでしたね?」
田中:「…………」
対象者A:「俺、ずっと信じてたのに……何もなかったみたいに、仕事してたんですか?」
(対象者Aが田中のデスクを強く叩く)
(田中は無言のまま、視線を逸らす)
対象者A:「……俺がいなくても、██(田中)さんはちっとも心配してくれなかったんですか?」
対象者A:「……俺のこと、もう要らなくなったんですか?」
この発言の後、対象者Aは机の上の資料を目にし、ある一点に気付く。
対象者A:「俺、昨日まで入院してたのに……なんで、俺の名前でこんなに成果が出てるんですか?」
対象者Aは先日まで入院しており、業務に一切関与していなかったにも関わらず、〝河野〟の名義で複数の業務成果が記録されていた。
[記録:██年██月██日]
対象者Aの錯乱と精神の異常
[内部システム記録]
██年██月██日 - ██(河野)のアカウントによる業務記録(本来対象者Aが入院していた期間)
複数の契約成立、案件処理、評価コメントが記載されている。
対象者Aは自分の知らない間に「自分の功績」が生まれているという事実に困惑し始める。
この瞬間を境に、対象者Aの精神状態に明らかな異変が発生した。
[同僚の証言]
「██(河野)が、急に自分のデスクのパソコンを覗き込んで動かなくなったんです」
「そのまま固まって、小さな声でずっと何かを呟いていました」
[監視カメラ音声記録 11時23分]
対象者A:「おかしい」
対象者A:「なんで?」
対象者A:「俺じゃない」
対象者A:「俺は俺じゃない……?」
画面を見つめながら繰り返し呟く。
見かねた田中が対象者Aの肩に手を置こうとするが、対象者Aは突然肩を揺らし、荒い息を吐く。
対象者A:「俺はいなかったのに、誰が、これを――」(低く呟く)
[監視カメラ記録 12時08分]
対象者Aが誰もいない隣のデスクに向かって「お前か?」と声をかける。
周囲の社員は困惑するが、特に注意を払っていない。
田中だけが、その様子をじっと見つめていた。
[同僚の証言]
「██(河野)が時々空中を睨みながら『違う、俺じゃない』って呟いてるのを聞いた」
「最初は冗談かと思ったけど、あれは本気で『誰か』が見えていたんだと思う」
この日を境に、対象者Aは「見えないものが見え」「聞こえないはずの音が聞こえる」と主張し始める。
統合失調症に似た症状が顕在化し、職場内でも次第に「おかしな言動が増えた」と認識されるようになっていく。
しかし誰もそれが本当に異常なのか、気付く者はいなかった。
田中を除いては――。
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