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【事件記録XXXX-5】

記録日時:██年██月██日 関係者:  田中(仮名) - ███株式会社 ██支社 チーフマネージャー(当時)  河野(対象者B) - ██年██月██日より勤務(詳細不明) [記録:██年██月██日]  対象者Bの執着の顕在化と、田中の健康状態の悪化  ██年██月██日以降、対象者Bは田中への執着を公然と示すようになった。  それは単なる視線の監視に留まらず、以下のような異常行動が観察されている。 [同僚の証言]  「あの打ち上げの後くらいから、██(河野)がずっと██(田中)さんを見てることに気付きました」  「最初は気のせいかと思ったんですけど……どんな時でも、ですよ。食堂でも、オフィスでも、会議中でも」  「気付けば、じっと██(田中)さんを見つめているんです」 [監視カメラ記録:██年██月██日 10時23分]  [映像開始]  田中がデスクで部下と話している。  対象者Bが少し離れた位置から、書類を持つふりをしながら田中を見つめている。  田中は対象者Bの視線に気付き一瞬手を止めるが、すぐに仕事に戻る。  対象者Bは微笑しながら、その場を動かずに見続けている。  [映像終了] [記録:██年██月██日]  対象者Bの異常行動:会議室への介入  ██年██月██日、田中は部下と会議室で打ち合わせをしていた。  その会議が終了し部下が退出した直後、対象者Bが会議室に入り込んでいる様子が記録されている。 [部下の証言]  「会議が終わって部屋を出たら、入れ違いに██(河野)が入っていきました」  「何か話があるのかなって思ったんですけど、██(田中)さんの顔色が……何というか、ひどく強張ってて」  「あの時の██(田中)さん、何かを耐えてるみたいな表情をしてました」 [監視カメラ記録:会議室前]  [映像開始]  部下が会議室から退出する。  廊下で待機していた対象者Bが、間髪入れずに会議室へ入る。  ドアが閉まり、内側から施錠される。  (会議室内の音声記録はなし)  [映像終了] [記録:██年██月██日 11時32分]  対象者Bの執着の顕在化と、田中への異常な影響  ██年██月██日以降、対象者Bは田中への異常な執着を公然と示すようになった。  また、同時期から田中の体調に明らかな異変が見られるようになり、田中の飲食物に対する異物混入の疑いが浮上した。 [田中の健康状態の変化]  食事後の嘔吐、下痢、頻尿の増加  倦怠感と体力の急激な低下  精神的不安定(被害妄想、睡眠障害)  「水以外の飲食が怖くなった」と田中は述べており、次第に体重の減少(██kg)と衰弱が進行した。   [同僚の証言] 「最近の██(田中)さん、前よりもずっと元気がなかった。食事の量も減って、いつも疲れた顔をしてた」 「でも誰が心配しても『大丈夫』って言うんですよ。……明らかに大丈夫じゃないのに」 「それに██(河野)が『██(田中)さんの体調は俺が管理しますから』って言ってて……なんか、変だった」 [監視カメラ記録:██年██月██日 12時15分]  [映像開始]  田中が一時的に席を外す。  対象者Bが田中の飲み物に小さな瓶から液体を滴下。  田中が席に戻る。  対象者Bが微笑みながら「██(田中)さん、これ飲みますよね?」と発言。  田中が戸惑いながらも受け取り、飲む。  [映像終了]  この記録から、対象者Bが田中の飲食物に何らかの薬物を混入していた可能性が高いと判断された。 [監視カメラ記録:トイレ前 ██年██月██日 12時19分]  [映像開始]  田中がトイレへ向かう。歩行が不自然で、腹部を押さえている。  対象者Bがすぐ後を追う。  田中が個室のドアを開けようとする。  対象者Bが田中の手首を掴み、引き止める。  田中が対象者Bの顔を見上げ、何かを言う。  対象者Bが田中を宥めるようにしながら、個室の中へ押し込む。  個室のドアが閉まる。  [映像終了] [音声記録:トイレ内 12時22分]  (マイクが拾う範囲で、二人の会話が録音されている)  田中:「やめろ、頼むから……!」  対象者B:「全部、見せてください。見たいんです」  田中:「本当に、もうっ……」  (短い沈黙)  対象者B:「可愛い、愛してますよ█(田中)さん……俺にあなたの全てを見せてください」  (細かい衣擦れ音。田中の荒い息遣い)  田中:「……っ、いやだ……!」  対象者B:「大丈夫、俺は全部受け止めますから」 [音声記録終了] [監視カメラ記録:トイレ前 12時39分]  [映像開始]  しばらくして、ドアが開く。  田中が顔を伏せたまま、ふらつきながら個室から出る。  対象者Bが田中の肩に手を置き、何か囁く。  [映像終了] [補遺]  田中の健康状態の変化  ██年██月██日、対象者Bが田中の飲食物に薬物を混入していた ことが明らかになった。  使用されていたのは、以下の三種類である。  ・催吐剤(摂取後、短時間で嘔吐を引き起こす)  ・利尿剤(排泄の抑制が困難になる)  ・下剤(胃腸の異常な活動を促進する)  この組み合わせにより、田中は飲食をするたびに体調を崩すようになり、結果的に栄養を十分に摂れず衰弱していった。  また、精神的な影響として「対象者Bの存在に対する過剰な恐怖」が観察されている。  「もう無理だ」  この言葉を最後に、田中は対象者Bへの抵抗を完全に放棄する様子を見せた。

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