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Prologue オムファタル①

 ――ただ、燃え盛る炎を眺めていた。  夏は終わるも、まだ暑さが引ききらぬ秋口。  夜の闇を押し退けるように、火の手が激しく舞い上がる。  鋭い熱気が皮膚を刺し、まぶたの裏までも赤く染め上げていく。  揺れる光と影が、周囲の輪郭を曖昧にしながら踊っていた。  パチパチと木の爆ぜる音だけが、耳鳴りのようにこびり付いて離れない。  息の詰まるような静けさの中、乾いた破裂音が一定の間隔で落ちてくる。  焦げたにおいが鼻を刺し、空気の奥深くまで黒く染み込んでいった。  * * *  空間の隅々にまで張り詰めたような静寂。  音もなく、風もない。  静けさだけが支配するこの場所では、時間の流れさえも鈍く引き延ばされたまま、どこかで止まってしまったかのようだった。  握り込んだ拳の中に、冷ややかな汗がじわりと滲む。  喉の奥になにかが滑り落ちていく感触。  こくりと嚥下した音が、静けさの中にすうっと吸い込まれていった。  俺は、ゆっくりと口を開いた。

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