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戦闘
日光と2人の体液を浴びた植物は既にテラスいっぱいになるまでツルを伸ばしていた。
ヴェルトは臆す事なく謎の植物に斬りかかる。
ヴェルト の存在に気が付いた植物が、無数のツルをヴェルトに向けて伸ばした。
ヴェルトはツルを躱し、斬り、防ぎ、受け流す。
そうしながら植物の根に向かい走り続ける。
「ッ!」
ツルが顔を掠めて、ヴェルトの頬から一筋の血が流される。
ヴェルトは更に紫の瞳を鷹のように鋭く輝かせ、踊っているかのように無駄の無い美しい動作でツルを避けながら更に根へ近付く。
(ヴェルト、さ、あ……♡)
疲れた体を懸命に動かす。
(僕が……僕が! ヴェルトさんを守らなくては!!)
もはや手も向けられないので、コントロールが上手くいくかどうか分からない。
それでも。
(『ファイア・エンチャント』……ッ!)
カイラは無詠唱で魔法を使用する。
ヴェルトに褒められた経験もある援護魔法だ。
ヴェルトが手にする双剣が炎を纏う。
ヴェルトは剣を一瞥した後、強烈な一撃を植物の根に叩き込んだのだ。
植物の根が燃え始め、上へ上へと炎が上がる。
ぐるんぐるんとツルを動かし、やがてツルは2人を解放した。
「カイラ君!」
武器を放り投げたヴェルトは、カイラの元へ走り、地面へ落ちる前にカイラの体を受け止めた。
背後から「ふげっ!」という間抜けな悲鳴が聞こえた気がするが、まぁ気にする事はない。
万が一の為に備えられていた鎮火用のスプリンクラーが、恵みの雨を降らせる。
「大丈夫!? 怪我は無い!? 嫌な事は……されたよね本当にごめん……!」
衣服は一応着ているものの、性的な行為を行わない限り外れないはずの貞操帯が転がっているのが目に入り、ヴェルトはカイラに顔を埋め後悔する。
「ヴ、ヴェルト……さん♡」
顔を蕩けさせたままのカイラが、ヴェルトの体に手を回す。
「カイラ君……? どうしたの!?」
「な、なんか……体熱くて治らないんです……♡」
カイラはヴェルトにキスを乞う。
「ヴェルト殿……!」
いつのまにか背後で座り込んでいたマティアスが、ヴェルトに呼びかける。
「すまなかった……あの植物の汁液には、媚薬のような効果があったようでな……っ、体が、言う事を効かないのだ……」
自分自身を抱くように体に手を回し、マティアスは震えながら続ける。
「ヴェルト殿。アマネにゲストルームまで案内させる。そこで……多少汚しても構わんから、カイラが落ち着くまでそばにいてやってくれないか」
マティアスは「体が濡れた~」と嘆いているアマネに視線を送る。
「案内するんだ……っ、アマネ!」
「う、う~~ん」
アマネは濡れて重くなった体を懸命に動かし、カイラをお姫様抱っこしたヴェルトをゲストルームまで案内したのだ。
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