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整理
魔法学校の屋上にて。
相変わらず小綺麗な格好のガゼリオは、魔法の影響を受けてひと房だけ変色した髪を風で揺らしながら紙切れに目を通していた。
かつてカイラやヴェルトの手にも渡った事のある、忌々しい夢魔の紋章が刻まれたメモだ。
丁寧な字で長ったらしく書かれているが、内容をかい摘むとこうだ。
呪いの維持の為、以下の呪いだけかけた。
①欲情の呪い
常に肉欲が湧き、別の者の体を求めるようになる呪い。対象者が男であれば、精子が作られる量が通常の倍になる。
②自慰封印の呪い
自分を慰める事ができなくなる呪い。性器に触れても絶頂に至る事も射精もできず、自らの欲望を掻き立てるのみ。
そして、貞操帯を外す鍵はカイラである。
「とりあえず……近くにいる人間を巻き込む事はねーのか」
カイラにかけられているもうひとつの呪い……周りの人間の劣情を掻き立てるという呪いが無いことに、ガゼリオはとりあえず安堵した。
学校の教師として日々多くの生徒や先生と関わらなければならないのだ。
その中に劣情を掻き立てるなどという厄介な呪いを持った自分を投入する訳にはいかない。
(……あの時、抑えきれなくなったもんなぁ)
ふと、ガゼリオはカイラの呪いに当てられた時の事を思い出す。
どうしても自分で制御できなくなり、たまたま目の前にいた想い人のヴェルトと繋がる事しか考えられなくなったのだ。
もしこの呪いに抵抗できるような人間がいれば……
(よほど精神力が強いか夢魔に抵抗がある奴だけだな)
「しかし……」
ガゼリオは不快そうにズボンの上から貞操帯に触れる。
「カイラずっとこんなん着けてんのかよ……」
人間としてのプライドを傷付けられた気分になり、ガゼリオはメモを乱暴に丸めてベストのポケットへ突っ込み、代わりにお気に入りの紙タバコを1本取り出す。
(重いし苦しいし……立って小便できねーし)
「『ファイア』」
ガゼリオの人差し指に火が灯り、それでタバコに火を付けた。
(それに……オナニーできないって思うと逆に……)
「いや……いやいや」
これ以上は考えるのをよそうと、ガゼリオは口から煙をゆっくり吐き出した。
(……そういや、あの夢魔気になる事言ってたな)
『この前ヴェルトがセックスした時に大量の精気が手に入ったからさ』
(つまり……あのヤロー、遂に最後までカイラに手ぇ出したか……最低な奴)
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