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ギルドにて
「よぉヴェルト!」
冒険者ギルドの一席に腰掛け朝食を摂っていた、糸目と頬骨あたりに広がるそばかすが特徴的な腐れプリーストのダッドが、手を挙げて気さくに挨拶する。
清らかな白のローブがいかにも聖職者らしいが、いかんせん中身がアレなので全く神聖に見えない。
ヴェルトも手を軽く挙げ挨拶すると、モンスターの討伐依頼が掲載されている掲示板の前へと足早に向かう。
「なぁ、この前から毎日来てるよな?」
ダッドの対面に腰掛けていた、ヴェルトとダッドの共通の知り合いの男が白髪頭の背を目で追う。
「そうだな、アイツ最近、毎朝ここに来る」
「何か狙ってる依頼でもあんのか?」
何かひそひそと話している知り合いの視線など気になる訳もなく、ヴェルトは掲示板の依頼を見てゆく。
「人喰いグモ」「オーク」「グリフォン」「スライム」……違う、違う、どれも違う。
ヴェルトが狙っているのは、もちろん夢魔の討伐依頼だ。
毎日こうして夢魔の情報が無いか探しているのだが、結局見つけられずにいた。
「……あ!」
とある依頼に目を奪われヴェルトは思わず声を上げる。
誰に奪われる訳でもないのにヴェルトは急いで依頼書を掲示板から剥がして文字に目を走らせる。
夢魔の討伐依頼
レザー山の麓にある廃屋に、2匹の夢魔が住んでいる事が判明した。
新たな被害者が生まれぬうちに、2匹の討伐を依頼する。
1匹につき100メーリアン
夢にまで見た夢魔の討伐依頼。しかも2匹同時にだ。
ヴェルトは思わず笑みを溢し、依頼書を持ってカウンターへと向かった。
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