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エピローグ

まだ凍てつくような寒さに肩をすくめる。 窓の外ではちらちらと雪が降っていた。 卒業式が終わって、クラスの生徒達はそれぞれ卒業アルバムを交換してあとがきを書き込んだり、担任の相澤先生と記念写真を撮ったりしている。 T大の合否は前日に発表されて、俺は無事に合格していた。 母親に報告すると、「安心して卒業式をみれるわ」と母親らしいあっさりとした返事に苦笑した。 父親にも電話して、大学合格を報告した。 突然俺から電話がかかってきたことに一瞬言葉を失うほど驚いた後、電話越しに鼻をすする音がして、涙ぐんでいるのが分かった。それから、静かに「頑張ったな、夏和。おめでとう」と言ってくれた。 「東條!一緒に写真撮ろう」 上田に声を掛けられて頷く。 「うん、いいよ」 上田がスマホのカメラを向けて構えると、近くにいた男子が「俺も!」と肩を寄せてくる。 写真を撮り終えると、上田以外はまた他の生徒に話しかけに行った。 結局5人くらいで撮った写真を見返す。 「いいね、これ」 「東條と二人で撮りたいんだけど」 拗ねるように言われて、わかったよ、と二人でもう一度写真を撮った。 「T大、合格おめでと」 「ありがとう。上田も就職決まってよかったね」 「ありがとな。あと、先生とのことも丸く収まったみたいでよかった」 そう言われて、面食らう。 上田は勘のいい奴だとは思っていたけれど、いったい俺たちのことをどこまで知っているんだろう。 「……上田くん、知ってたんだ」 「まあ、なんとなくだけど」 上田は当たり前のようにそういって、相澤先生を見つけると笑顔で手を振る。 相澤先生はこちらを見て、それに応えて手を挙げた。 ほかの生徒にアルバムを渡されてそこになにかを書き込み終わると、こちらに向かって歩いてくる。 「東條、上田も、卒業おめでとう」 「ありがと先生。卒業しても東條のことよろしくな」 にい、と悪戯っぽく笑う上田。 「わかってるよ。……そのせつはどうも」 「俺がふっかけなかったら先生一生燻ってただろ」 「……上田って意外といい性格してるよな」 二人の会話についていけなくて首を傾ける。そんな俺をみて、相澤先生は苦笑しながら頭を撫でてきた。 心地よい手のひらの感覚にうっとりしてすり、と頬を寄せる。 「あんまり教室でいちゃつくなよ」 上田にそう言われて、恥ずかしくなって顔が赤くなる。 「あは、かわいいね」 「な。かわいいだろ」 上田と一緒になって相澤先生までそんなことを言う。 「う、うるさいなあ」 恥ずかしさに耐えられなくなって、赤くなる顔を手で顔を隠した。 もう片方の手を大きな手でぎゅっと握られて、顔を上げる。 「……東條、ありがとう」 そう言って微笑む相澤先生に胸がいっぱいになって満たされる。 「俺のほうこそ、ありがとう先生」 ぎゅうとその手をそっと、けれど確かに握り返した――。 END

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