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第一章 第17話 エドガーside
――――――こんな形で抱いてしまうなんて。
竜の秘宝のカギを握る魔女が現れたとツッツファーレから情報が入り俺はすぐに異世界にとんだ。
不思議と文字や言葉はすぐに理解できた。だが、制限がかかったかのように、まったく魔法が使えない。不思議な世界だ。いやその方が、魔女を隠すには適していたのかもしれない。
難航した魔女探しもある日を境に突然見つけることが出来た。こちらに来るときにツッツファーレから手渡されていたが魔道具が一気に反応したのだ。
どうやら魔女は代替わりをしているらしく魔力が不安定になっていたのが好機に転じたらしい。
もともと魔道具が、指しすべくある大学に目を付けていた。この学生の中に紛れ込んでいるはずと、俺は「江戸川」という大学生に扮して、イベントごとに顔を出してはそれとなく情報を探っていた。そのうちたまたま一緒になった青年が気になり、あれこれ世話を焼いてるうちに目が離せなくなった。
その時魔道具が反応した。はっきりと魔女はこの青年だと示したのだ。
――――――それがアキトだった。
アキトはどこかふわふわした感じで頼りないのだ。目を離したらどこかに飛んで行ってしまいそうなほどに。そのくせ曲がったことは許せないという。なんだ? こいつは天使か?
俺は魔女と天使を聞き間違えたのかと思ったほどだ。
それなのに、アキトは本当にどこかに飛んでしまったのだ。俺の手から離れるように。
どれだけ俺が焦ったか! まさかの時の為に追跡用魔道具を用意しててよかった。
なのに飛ばされたのは俺の元居た世界だった。まさか、俺以外の誰かに魔女を狙われていたのか? はやる気持ちのまま現地に向かった。広い草原の森の中の小屋からアキトの反応がする。
しばらくして戸があき、アキトの姿が見えた時はホッとした。
すぐさま駆け寄り抱きしめたかったのだが、小屋にはもう一人いた。それも獣人だ!
俺は必死だった。ここで突き放されたらもうどうしたらわからないほど俺はアキトにのめり込んでいた。
「クロ。いいよ。僕も話しがしたい」
「クロ? あの黒猫か?」
なんてことだ。こいつは、きっとここの住人だったに違いない。
「お前がアキトをさらったんだろう?!」
くそっ。俺はまだ自分の事も何もアキトに言えてないというのに。腹が立つ。殴りかかろうとした時。
「いい加減にしろ……お前ら僕に説明する気はないのか? 」
アキトから今まで聞いたことがない程の冷たい声が響いた。
無表情なのにぞっとするほどの恐ろしさを感じた。美人ほど怒らせたら怖いことを思い知った。
素直に謝った後、竜の秘宝をさがして魔女を探していた事を打ち明けた。
その後疲れていたアキトをクロードは眠らせる。なんと手際がよい。
アキトは自分が眠らされたことも気づいてなかっただろう。
クロードは俺に自分は魔女ブラッディ・マリーと共に異世界に渡りアキトを育てていたと言った。
しかも魔女マリーはアキトに魔女以外の道も残していたという。
この後一緒に行動を共にしてもいいが、あくまでも将来の選択肢はアキト自身に決めさせろと進言してきた。もとよりアキトの人生はアキトのものだ。俺はアキトが嫌がるなら魔女にならなくてもいいと思う。
ただ、一緒に居られる口実が欲しいんだ。俺の事を好きにさせる時間が欲しい。この笑顔をずっと傍で観ていたいんだ。
……町に宿をとったあたりからクロードとアキトの仲が今まで以上に親密だとは感じていた。
それは長年一緒にいたせいなのか? たとえ二人が心を通じあっていたとしても俺はアキトが好きだ。
馬車を襲撃をされ、俺はアキトの力を知った。なんと治癒魔法の使い手だった。
闇属性を教わってないからアキトは攻撃魔法が使えないとクロードに聞かされた。闇の力の使えない魔女っているのか? 攻撃魔法が使えないなら俺が守るしかない。俺はアキトを守るため傍に居ればいいのだ。
久しぶりに戻った王宮は、不穏な空気に包まれていた。
みんなで食事をと勧めてくる兄貴らを今日は疲れてるからと断って俺の部屋に食事を運ばせた。疲れてるだろうアキトにこれ以上気をつかわせたくなかったのだ。俺自身堅苦しいのは嫌いだ。一応毒に気を付けようとアキトが食事に浄化魔法を唱えてから俺らは食事を始めた。
でも……こんなことになるなんて。
異変はまずクロードの身に起こった。突然腰が抜けたように膝から倒れたのだ。
アキトが言うには観葉植物が原因らしい。どうやら猫科の獣人が、酩酊したり麻痺したりする植物があるらしいようだ。それにアキトは、植物の言葉がわかるというのだ。これもアキトの能力のひとつだった。
なんと俺の部屋や寝室に置いてある植物のほとんどが、性的な興奮をもたらす物や幻覚をみせる香りを放つ類のものとわかった。なんだか俺もドキドキしてきたヤバい。
アキトも顔が赤いし様子が変だ。
クロード言葉で俺は初めてここでアキトがまだ魔女として覚醒してないと知った。
アキトの中では魔力が活性化してもその身体に馴染まず暴走する。馴染ますためには魔力の相性がいい相手の体液を取り込まないといけないという。
そうか! 俺が最初からアキトに惹かれていたのは魔力の相性が良いせいだったのかもしれない。そんな相手は一生に一度出会えればいいぐらいの確率だ。
でもアキトはクロードを愛しているのか? クロードも運命の相手なのか?
この世界は複数婚が認められている。別に一夫一婦制ではない。俺にも可能性はあるはずだ。
だけど……。
「エドガー。今も言ったようにアキトは貴方にも惹かれているんです」クロードが諭してくる。
それが本当なら素直に嬉しい。でも愛を語る二人の様子を見せつけられたようで、心が苦しい。
「エドガー。戸惑っているのはアキトのほうです。私は最初から貴方と共に彼の伴侶になろうと考えてましたよ。どうか私も込みで受け入れてやってはもらえないだろうか?」
つまり、クロード込でアキトを愛せよというのか!?
ほんの少し、躊躇はした。だけどこの機会を逃したら俺はいつアキトを抱けるかなんてわからないじゃないか!
アキトの身体は極上のスイーツみたいだった。どこをとっても甘い。
それに精を放つと同時に自分の中にも魔力がみなぎってくる感覚が得られる。俺は少しは経験はあった。童貞ではないがこんなに感じる相手はいなかった。アキトは最高だ。
その後俺と回復したクロードでかわるがわるアキトを愛した。クロードはアキトにこの上もなく優しい、俺に見せる表情とは全く違う。交代しろと迫ってきたときの、鬼気迫る顔などアキトには決してみせないのだろうな。
明け方近くアキトが意識を手放すとクロードが俺に確認をしに来た。
「アキトとパートナー契約を契る気はあるのか?」
「もちろんだ。それを俺に聞くという事はお前はもう結んだんだな? 」
「そうだ。選択権は私にもある」
「ならばあえて言おう。俺をパートナーに加えてくれ」
「私との条件をのんでくれるなら認めてもかまわない」
「……ああ」
くそっ! やっぱりこいつには策士の才能がある……。
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