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第一章 第18話 嵐の前の静けさ

 エドガーが用意してくれた礼服はフリルがいっぱいついたシャツに黒のズボン。腰に巻く金のシルクのサッシュベルト。金の縁取りのついたコート。  わ~お。これってビクトリア朝のゴシック衣装ではないの?  昨日、エドガーのお兄さんたちや側近の方々の服装はみていて映画みたいだとは思っていたが僕もこれを着るのか? ハロウィンコスチュームじゃないよね?  「これってさ、コスプレなんじゃ……」  振り返って先に着替えていたクロードに見惚れた。僕のとは違う~っ。魔法使いみたい! クロードは濃いムラサキのローブを羽織っていた。中は白のシャツに黒のタイトなズボンに黒のブーツを履いてる。カッコいい! 「クロって、魔法使いみたい! 」  クロードは少し苦笑しながら、僕の着替えを手伝ってくれた。 「アキトは何を着ても似合いますね」  そんな風にお世辞をいってくれるのはクロードだけだ。 「アキト! 可愛いぜ。あ~外に出したくない。可愛すぎて他の奴らに見せたくないっ」  いや、ここにもまだ一人おりました。 「エドガーこそ。凄いね全身金刺繍じゃん。近衛騎士みたい。マントがカッコイイ」 「俺ゃ騎士だからな。ん~この服装久しぶりすぎて肩こりそうなんだがな。お前がカッコイイと思ってくれるなら着た甲斐があるぜ」 「ふふふ。なんか僕らってお互いを褒めまくってるね」  はたから見たらイタイ奴らなんだろうか? でも二人とも格好いいんだからしかたない。 「行く前に昨日までの僕の考察を聞いてくれる?」  まず毒を盛られていた可能性が高い第二皇太子のラドゥだが僕の治癒魔法だけですぐに回復したところをみるとそんなに強い毒ではない。つまり犯人はラドゥを本気で殺す気はなかったということではないのか。  第一皇太子のユリウスに関しても嘘を言ってる様子には見られない。俺様気質だが宰相のコーネリアスのいう事にも耳を傾ける。他人の意見も聞き入れる心の広さも持っている。  第二皇太子自体は天然の美人さん。見た目はほんわかだが、発言の中にキレがある。自分の才能を隠している気がする。ユリウスをたてるためか?そしてその側近のオスマンは何かを隠してる気がする。  ここまでを一気に話して僕は二人の反応を見た。オスマンに腕を引っ張られてどこかに連れて行かれた予知夢については心配させたくなくって言えなかった。僕があいつと二人っきりにならなけれがいいことだしね。 「私も毒については同じ意見です。よほど毒の耐性に強い体質でなければもっと弱まってられたかと。しかしアキトの魔力が高まってるのは確かですので治癒力が向上したせいかもしれません」  僕は魔力のおかげで魔法が使えるようになってきてるんだね? なんだか嬉しいな。 「兄貴達については俺は疑っちゃいねえ。ただ取り巻き達が多いのは事実だからそのあたりを調べたい」 「うん。そうだね。……あと、これは推測なんだけど」  僕は昨日からラドゥさんに言われた一言がひっかかってたんだ。 『だって今夜はハロウィンナイトだからさ』  彼は何故そう言ったんだろうか? 魔力が集まる日だからか? 「あのさ、昨夜ここに多量の植物があったのってエドガー狙いだったと僕たちは考えてたじゃない? でも後継者を除外していくだけなら何も媚薬や幻覚効果のあるものなど必要なかったんじやないかなと思ってたんだ。だから後継者争いと昨日のは別なんじゃないかと」    僕の意見を聞いて、クロードの顔が引き攣った。 「クロ? どうしたの? 」 「私たちは何か思い間違いをしていたのかもしれない」 「というと? 」 「まさか……狙われたのはアキトだったのでは? 」 「なんだと! 」

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