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第一章 第23話 クロードの過去-1
僕はエドガーに抱きつきながら泣いていた。クロードは優しく頭を撫でてくれている。
「アキト。俺お前を守っていくよ。俺お前がすっげー好きだ。あの人らに負けねえくらい愛してやるからな!! 」
エドガーもボロボロ涙を流している。あまりに大きな激情を身体の奥で感じ余韻がまだ残っているのだ。
勇者と魔女は愛し合い絶頂とともに消えて行った。あとはその持ち主の元に強い魔力だけが残った。
魔女のハートの中にあったマリア・マグダレーナと力の剣の中にあったジークベルトの魔力を含んだ残留思念達。もう一度出会うことが叶えば再会の口づけと共に愛し合うと約束をしていた二人。その約束が叶い二人は幸せになれたのだと思いたい。
「僕の中にハートがあるよ。エドガーとジークの魔力のおかげかな? きちんと融合できたのは。魔女は愛に生きたかったんだね。思う存分好きな人を愛して一緒にいたかった。そういう思いであふれてる。あったかくてでも激しくて切ないよ」
「魔女は一番勇者を愛してるタイミングでその心を身体から切り離してしまったんですね。だから冷酷になってしまった……アキトの中にあるのはその一番愛にあふれてた時期の想いなのです。」
「クロ。魔女が好きだったのは勇者だけじゃないよ。賢者の事も愛してたんだよ」
「え?……今なんと? 」クロードが信じられない顔をした。
「だから賢者の事も愛してたんだよ。魔女はさ、勇者の次に賢者の卵を産むつもりだったんだよ。もちろん二人の伴侶 になる気だったんだよ」
「そ……そんな……それは本当なのですか? 」
「そうだよ。ハートと僕はもう一つになっているから、その時の気持ちはよくわかるんだ」
「……まさか……では……あぁそんな」
「どうしたの? クロ?大丈夫?」
「賢者は……賢者は魔女を愛してたのですよ。彼は魔女が勇者との卵を孕んだときに嫉妬をした。何故自分ではないのかと。その後勇者から王都に戻って伴侶契約をすると聞かされるのです。賢者は勇者を尊敬してましたし、友人だとも思ってました。それゆえに許せなくなってしまったのです。だから。秘宝を隠すためにお互いの一番大事なものを手放すように仕向けた」
「クロ? どうしてそんなこと言うの? 何故それを知ってるの? 教えて」
クロードは僕に嘘を付けない。伴侶契約時に嘘はつかないと誓ったからだ。
「わたしは賢者クロウ・リーの孫にあたります」
「じゃあクロが賢者の資格を持っているの? 」
じゃあ僕達ら3人が出会ったのは偶然じゃなくて必然だったのか?!
「……俺の中には勇者だったジークの想いが少し残ってる。アキトのハートは一番ジークを愛してた時のものだろ? そのあと魔女がどうなったのかをジークの想いは伝えてきてる。きっと力の剣をずっと持っていたせいだろう。心を失った魔女は利己的になり、自分の利益だけを考え、勇者や賢者の立場などを考えなくなった。その原因となったのがクロード、お前のじいさんだってことなのか?」エドガーがクロードを睨みつける。
「エドガー! 怒る相手を間違えてる!」
「だって……」
「お前はエドガーだ。ジークベルトじゃない! 僕だってアキトだ。マリア・マグダレーナじゃない!彼らの想いは受け取った。だが僕らは彼らじゃない。もちろんクロードもクロウ・リーじゃないんだ!」
「アキト……。」
「クロ。僕は君の事が知りたい。教えて。クロの事を全部知りたいんだ」
クロードはちらりとエドガーを横目で見てからため息を一つ吐いた。
「わかりました。答えましょう。わたしの母体となった獣人は魔族とのハーフでした。だからわたしの中にも魔族の血が流れています。そのせいか常人よりも魔力量や生命力がかなり多く、賢者の素質もあったのか知識量も多かったのです。
わたしは自分のルーツを探るべく三人の勇者の事を調べておりました。祖父の事を知ったのもそのときです。そしてある日、伝説の卵の話を聞くのです。伝説の卵とは魔女と勇者の卵の事でした」
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