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第一章 第23話 クロードの過去-2

 クロードは伝説の卵のありかを知る為に王宮に入る。先代の王の時代は、債務がひっ迫していたらしい。そこでクロードが宰相となり財政を立て直した。  そんな時、王宮の元で研究を行っていた施設に伝説の卵が保管されていると知る。  門外不出だといってなかなかその卵を見せてもらえなかったがやっとの思いで許可をもらった日に魔女の襲来に会う。それがブラッディ・マリーだった。クロードは魔女という言葉に反応した。自分の祖父が闇落ちするほど愛した相手。それが魔女。魔女とはどういうものか?それも伝説の魔女と同じ赤毛の魔女だ。  魔女の狙いは卵だった。卵は最後の魔女の血統だという。クロードはその言葉を信じて魔女と共に卵を強奪した。 「え?……盗んじゃったの? 」 「自由にしたと言って欲しいですね」 「泥棒じゃねえか……」  魔女はこの世界では孵化は難しいから異世界に行くとクロードに告げた。  最後にクロードが卵に触れると淡く光ったらしい。  それを見た魔女は「あんたも連れて行く」と言い出した。 「驚きましたが魔女に興味がありましたからついて行くことにしました」  しかしこちらから異世界には一つの時代に一人しか飛べない。  魔女は お前見た目は獣人だよな。じゃあ猫にでもなっちまったらどうだい? とクロードの姿を変え、ブラッディ・マリーは卵と一匹の猫を抱えて異世界に飛んだのだ。  一つの時代はおおよそ100年。つまりエドガーが飛んで来れたということはクロードが飛んでから100年はたったということだった。つまりクロードは200歳を超えているのだ。 「100年。そんなにかかったのか」 「孵化にはかなりの時間と魔力が必要でしたので」  それを言うと僕が気に病むとはおもったのか、クロ―ドは言いづらそうだったが、隠し事が出来ないのなら正直に言った方がいいだろう。諦めたように、クロードは包み隠さず話してくれた。  僕の祖母ちゃんであるブラッディ・マリーは、もてる魔力のほとんどをつぎ込み、若さを維持することが出来なくなったそうだ。見た目が年老いてたのはそのせいだったらしい。僕は自分のせいで外見が変わったのかと嘆いたが、クロードは「年相応になられてただけですよ。アキトのせいではないです」と言い切った。 「数百年は生きてらっしゃったので、人生最後の集大成に魔女の血統を孵化させたかったらしいです」  クロードからもかなりの魔力をもらったらしい。元の世界で猫の姿のままだったのはその影響もあったようだ。僕が産まれてからは魔女と競うように愛情を注いでくれたようだ。苦労して孵化した子だったから可愛くて可愛くて仕方がなかったという。  黒髪、黒目は住んでいた地域では目立たない容姿だったのが幸いした。 「成長と共にアキトは美しくなり、私はそれまでとの感情以上のものが湧いてくるのを感じました」  クロードがまっすぐに僕を見つめてくる。金色の瞳にどきりとする。 「誰にも渡したくない。そう思っていました」クロードの言葉にアキトが頬を染める。 「ったく、そんな昔からアキトを狙ってたんだな?」 「エドガー、人聞きがわるいですね。誰よりも愛してただけです」 「ありがとう。僕も……あ……愛してます」  あれ?なんで僕が告白してるのかな?なんか急に恥ずかしくなってきたよ。 「なんだよっ。可愛い顔すんなよ!俺は? 俺の事はどうなんだ?」 「エドガーも好きだよ。僕の中にある魔女の想いがエドガーを求めてるし」 「アキト自身はどうなんだよ? 」 「その……気が多いって思わない? 二人とも僕の事あきれてしまわない?」  どうしよう二人に嫌われないかな? これって二股って言わないのかな? 「そんなこと思いませんよ。大丈夫ですよ」  大人っぽくて僕の事をいつも包んでくれるクロードの事も、一緒に友達のように喜んでくれるエドガーのことも僕は好きなんだ。何より二人とも僕を一番に考えて行動してくれるのがわかる。 「二人とも好きなんだ。クロードのこともエドガーも好きなんだ」 「わかってましたよ」 「うぉおおおおっ! 俺は今最高に幸せだーっ」  エドガーが部屋中を走り回る。 「あはははは」  さてこれで魔女の資格と勇者の資格は手に入れた。あとは賢者だが……。

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