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第一章 第24話 オスマンside

 オスマンは厳格な祖父に育てられた。 「魔女はわがままで醜悪な生き物だ。だから王様をたぶらかした。いいかい。魔女を信じてはいけないよ。すぐに心がわりをする。自分勝手な生き物なんだからね」 「魔女って悪いの?」  オスマンはおとぎ話が好きだった。その中でも三人の勇者が国を守る為に戦った話が大好きだった。だが祖父は魔女が嫌いだった。 いつしかオスマンの中では魔女は悪者になっていった。  月日は流れ厳格だった祖父も病気がちになりオスマンは治癒と薬代のためにドリスタンという貴族の元に奉公に出た。ドリスタンはオスマンの才気を使って権力を高めようとしていた。数年後王宮で才覚を見出したオスマンはラドゥに認められ彼の側近となる。   ある日魔女が王宮にくるという知らせがツッツファーレから届いた。それもエドガー第三皇太子が大々的に宣伝しろと伝えたらしい。オスマンは憤怒した。 「魔女は王を狂わせたというのに! またこの国を乱すつもりか!! 」  王宮に来させないように馬車を襲わせたが失敗に終わった。  エドガーが連れてきたのはアキトという綺麗な男だった。この男が魔女? 信じられなかった。魔女は絶滅したのではないのか? 半信半疑でいるとアキトはラドゥ様に治癒魔法をかけた。治癒だと?人を助ける力を使うのか?魔女なのに? どうやら言い伝えに出てくる魔女のハートを探してるらしい。 「それが闇の力の源なのか? ならば奴が見つける前に奪いとらないと。この国をまた危険にさらしてはならない」 「王と謁見する今なら人が少ない。宝物庫から魔女のハートを探せ」  そう言ってドリスタンが数人の男たちを雇い忍び込ませた。また馬鹿な事をするものだとオスマンは思った。エドガーたちより先に手に入れ、自分たちの切り札にしようとしたのだ。  オスマン自身もその後から中に入った。男たちが他の宝石を盗まないか影から監視するためだ。 「ドリスタンには恩があるが、やる事が汚すぎて好きになれない」  オスマンはしばらく様子を見ることにした。  しかしそこにアキトが居たのだ。どうやって中に入ったのか? 信じられなかったが彼は転送されてきたと言う。意味が分からない。それに話しをしてもつかみどころがないのだ。どこかふわふわしてるくせに人の懐に入ってきてうっかり信じてしまいそうになる。  だが、奥の部屋に入った時にアキトは力を使った。彼自身は気づいてないのかもしれないが、少なくともオスマンにはそう見えたのだ。部屋自体に話しかけ、いとも簡単に魔女のハートを見つけ出した。いやハートの方から出てきたと言った感じだ。これが魔女の力でなくてなんなのだろう? きょとんとした仕草だが手にしたのは魔女のハートだ。このままではいけない。 「私がきちんと王へ献上しなければ」  ほんの少し脅すつもりだったのだろう。だがオスマンの剣を腕に受けアキトはケガをしてしまった。しかもアキトの血を吸ったハートが彼の胸の中にめり込んでいく。苦しんでたアキトを見てオスマンの中で罪悪感がよぎる。 「いや彼は魔女なのだから心配するのはおかしいのか。あぁ。彼が来てからは調子が狂いっぱなしだ」  病弱な祖父の治療代や家族の面倒を、みてくれているドリスタンへの借金は増えていくばかりだ。 「こんなことがラドゥ様に知られたら幻滅されるやもしれぬ」  ドリスタンは最近かなり焦っているように見える。だがラドゥに薬を飲ませるように指示してるとわかった時はさすがにオスマンは反論した。 「なあに致死量じゃない。少し弱っていただくだけさ。」ドリスタンは薄笑いをする。  その罪をユリウス様にきせ失脚させ、弱ったラドゥ様の後見人に自分がたつという目論みだったようだ。  すぐに解毒剤を用意し、毒自体も弱いものと取り換えた。 「本当は飲ませたくはない。だが少しは弱っていただかないと私が邪魔をしてるのがバレてしまう」  だからアキトが浄化をしてくれてオスマンは安心したのだ。 「魔女のくせに浄化と治癒が得意とは変わっているヤツだ」    どうみてもドリスタンは人の上にたつ才覚があるようには思えない。他にも権力者が多い中なぜ自分が後見人という地位につけると思い込んでいるのか? オスマンには疑問だったが、ある日酒に酔ってドリスタンは秘密をあかした。  なんとドリスタンは王の分家にあたるという。初代王が魔女に寄って色ボケにされたときに手あたり次第に卵を産ませ、その一つがドリスタンの先祖だというのだ。王の遠縁にあたるという。にわかに信じられない。  どうも裏があるようにしか思えない。  このままドリスタンの側にいて動きを探り続けるしかない。  「ラドゥ様申し訳ありません。わたしは貴方に忠誠を誓ったのに……」  

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