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第一章 第27話 伴侶契約。byエドガー

「さて、お前たちに伝えたいことがある。もう少し私につきあってくれないか」  儀式の後、僕たちは別室に呼ばれた。そこは王様の執務室だった。 「アキトのおかげで私は以前のように公務に復帰できるようになった」  まだ王様の石化の呪いは解けてはいない。しかし進行はストップしている。治癒が高まっているせいか体調も良く片足を引きずりながらも歩けるようになっている。 「お前たちは私を元の身体に戻そうとしているが私はこのままでいいのだ」 「親父っ!何言いだすんだよ!」 「エド、お前は思い込んだら突っ走る癖がある。そこがいいところでもあり、悪いところでもある。お前は私の気持ちを汲んだことはあるのか?」 「どういう意味だよ?」 「私がお前に秘宝を見つけて欲しいと頼んだことはあるのか?」 「……ない。だけどっ!親父が元気になれば争いごとが減ると……」 「そんなことはない。エドの気持ちはありがたいが、私はもう歳だ。そろそろ王位を譲りたいと考えているのだよ。」 「そんなっ。親父引退するのか?」 「無論今すぐではないが、徐々に引き継ぎも検討していかないと。幸いにも私が寝込んでいた時に公務をユリウスとラドゥが分担してくれていた。ドラゴン騎士団もお前が引き継いでくれる。後はこの城に蔓延(はびこ)る闇と(よど)みを払う事に専念したい」 「闇と澱み?」 「そうだ。お前も気づいてはいるだろう。この王位を狙っているもの、またこの国を混乱させようとするものがいることを」 「王様、それについては私達も探りを入れている最中です」  クロードが一歩前に進んで頭を下げた。クロードも動いているという事なら厄介な事項なのだろう。 「ならば、先にこの国の膿を出す手伝いをしてくれないか? それがわたしの望みなのだ」 「わかった。親父の望みをかなえてやるよ」 「そうだね。王様には僕が治癒をかけ続けるよ」 「アキト。父上と呼んでくれないのか?」 「へ?あの……ち、ち、王様少し時間を下さい」 「ははは。赤くなったアキトもかわゆいのぉ」 「このっわざとだろ? 親父、アキトをからかうなよ!」 「エドガー。貴方はドラゴン騎士団をまとめる長となるのです。王様への口調ももう少しあらためなければなりませんね」 「わかってるよ」  クロードに叱られ、口をとがらせるエドガーはわかっているようにはみえない。 「ははは。親族だけの時は良いだろう」  王様が嬉しそうにされているからいいのかな。 「はぁ。……疲れた。王族って親戚が多いんだね」 「すまねえなアキト。俺も使い慣れない公式用語で話し疲れちまった」 「エドガーは普段から平民の言葉を使いすぎてるからな。」  クロードも珍しく少し疲れた様子で椅子にもたれかかっている。 「あぁ。俺は平民も貴族も平等だと思ってる。だがら言葉遣いもできるだけ平民に近づけたかった。だが最近は格式ばった場所や、規律によって使い分けなけりゃいけねえと気づいたよ」 「皆さまお疲れ様です」  城の侍従達がうやうやしく頭を下げながら部屋へと入ってきた。 「これよりアキト様には湯浴みをしていただきお召替えの上寝所へお連れいたします」 「ああ。疲れただろうからマッサージもしてもらえ」 「マッサージ?わあ。今日は着なれない衣装で肩が凝っちやったから嬉しいよ」  僕はキラキラした目で侍従さん達をみた。  違う意味でギラギラした目でみてるクロードやエドガーの視線はこの際無視だ。寝所という単語が出た途端、二人とも雄の顔になってしまった。

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