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第二章 3話 ロックワイバ-ンの馬車
「馬じゃないんだね?」
「そうだな。これはロックワイバーンだ」
馬車自体が巨大なハーネスの上にあり、そのハーネスがオオトカゲの魔物であるロックワイバーン2体にくくりつけられていた。
徹夜あけの三人は王やユリウス、ラドゥ達に見送られながら王都を後にした。
早朝だったこともあり見送りは少人数となった。だがその方が気が楽だというのもある。
てっきり、馬に似た生き物が引く馬車だと思い込んでいたために、現れた生き物に驚いたのだ。
「こいつは断崖絶壁を登るのに適しているんですよ!」
綱を握る御者は自慢げに話し出す。
「卵の頃から飼い慣らしてるので今では俺の事を親とみなしてるんです。俺もこいつらを子供と思ってるんですよ」
ロックワイバーンは 魔物の中でも比較的大人しい部類らしい。6本の手足に6本の指を使って器用に岩を掴み登っていく。指の筋肉が盛り上がり鍛えているのがわかる。前足も後ろ脚も同じように使えるのが不思議だった。
「馬車の中は重力魔法がかけられてるんで方向感覚はかわらないと思いますが、窓から顔はださないでくださいね。視界が反転して酔ってしまうので」
「はは。はい」
車内にはアキトとクロードにエドガー。そして従者のバレットもついてきた。アキト様が訓練に没頭できるように身の回りは自分がすると言い出して聞かなかったからだ。思いのほか車内は広く、こちらも空間魔法が使われてるようで給仕スペ-スもあるし奥には人一人が寝れるほどのスペースもあった。
馬車の外観も凄かった。竜の模様がふんだんに描かれていてる。魔物よけになるそうだ。最強である竜に関わるものを襲うなんて事は滅多にないという。
「凄いなぁ。少し左右に揺れるのは仕方ないかな。ほとんど垂直な面を登ってるんだもんね」
「こうしてると断崖を登ってるようには思えないな」
「さようですね。お茶も不通に飲めますのでね」
バレットが入れた紅茶を飲めるほど馬車の中は安定している。実際には90度近く傾斜しているのに微塵もそんな風には感じられない。
「魔法ってすごいなあ」
ほうっと一息ついてアキトががつぶやく。
「ぷっくくく。なあに言ってんだ。この中じゃおそらくお前の魔力が一番高いぜ」
「ふん。僕はまだ使えない魔法の方が多いんだよ!それに相性もあるし」
「急ぐ必要はありませんよ。闇魔法以外はそれほど反発がなかったので後は訓練次第ですね」
クロ-ドが微笑みながら答える。
「アキト様攻撃魔法は闇魔法だけではありませんよ」
バレットは光魔法も使いかたによっては攻撃に使えるのではと言い出した。
「伝説の光の矢ってご存じですか?」
バレットの子供の頃に見た絵本に書かれていたらしく。光のエネルギーを矢の形に変え弓で射抜くと魔物があっという間に消えて浄化されてしまうという御伽噺らしい。
「面白い!それいいね!」
「ふむ。それは使えるかもしれませんね。着いたらさっそく練習してみましょう」
クロードが言うにはアキトが使う癒しの魔法と、光の魔法は相性がいいらしい。
「よかった。僕にも出来る事があるかもしれない」
「そうですね。こういうのって一人で悩まず意見を出し合って試していくほうが良い結果が出やすいのかもしれませんね」
「ああ。そうだな。昨日もそうだったよな」
「ええ。そうでした」
昨日は三人で徹夜でいろんな書物から不老について文献を探った。
そして若さを保つ秘術には竜がかかわってることがわかった。
「つまりは材料の中に竜に関するものが必要になるんだろうな」
「おそらくだが、文献の中に竜の身体の一部が必要と書いてあった」
「なんだろうなあ?」
「例えば、エドの胸にあるようなものかもしれませんよ」
「んん?これか?」
エドガーの胸には力の剣が収まっている。ハーネス状のホルダーに納めて身体から離さないようにしている。もちろん眠るときもつけていてホルダーを外すのはアキトを抱くときだけだった。
「その鞘は竜の牙で作られてるんだよね」
「そうだ。この持ち主が騎士団長だと竜に理解してもらえるらしい。後は竜語や竜の文字が読めるようになったな。」
「そうなんだ。じやあ今なら王宮にかかれてた竜の文字が読めるんだね」
「おう!また帰ってきたらいろいろ探して探検しような!」
「探検ですか?お手柔らかにしてくださいね」
明るく笑いあって終始馬車のなかではこんな調子だった。仮眠も代わる代わる交代してとれた。
だけど魔力供給が出来なかったのだ。僕らは魔力を高めるために互いの精液を媒介とする必要があるんだ。あるんだけど、従者のバレットがいる為なかなかそういう雰囲気になれなかった。
バレットは生まれながらに執事教育を受けてるので 私は壁だと思って下さいと気にせずヤれというんだけど、出来るかーい!ムリだよ。いや、王族や貴族の方々は使用人は壁と思われるのかもしれないが、僕には無理だ。
エドガーは王族だけど若くから王家を飛び出して放浪してたので平民の感覚の方が強く僕と同じでムリだと言う。クロードはかわらずポーカーフェイスだ。おそらく僕がシてと言えば誰がいようとシてくれるだろう。
でも、そんなの。それも知ってる人の前で乱れる姿を見せつけるなんて恥ずかしくて出来なーい!!ヤダヤダ。
ということでこの3日、エッチはおあずけでした。
ドラゴン城についたらヤろうねと小声で僕らは囁きあった。
でも、ちょっとクロードがおとなしすぎて心配。彼は自分がダメージを受けてる時ほど静かだ。旅立ち前にした寿命を合わす契約でかなりの魔力を消費したはずだ。
「クロ大丈夫?」
「ええ。大丈夫ですよ」
にっこりと微笑む姿に余計に不安になってしまう。
「クロ。絶対に僕が守るから」
「アキト?」
【クロード。僕はお前を魔物にはしない。お前の魔力を僕が制御してみせるよ】
僕はクロードの手を握りしめながら心の底からそう誓った。
クロードは大きく眼を見張った後に嬉しそうにほほえんだ。
「さあ!皆様方!着きましたよ!」
御者が馬車の外から声をかけてきた。
「やっと着いたかあ!」
エドガーが首をコキコキ鳴らしながら馬車を降り、僕とクロードが後に続く。
最後にバレットが後片付けをしながら降りてきた。
「わあ!凄ーい!」
外敵を防ぐため、断崖絶壁に建てられたドラゴン城はまさしく竜の巣と言われるくらい気品に満ちてそびえたっていた。
高い城壁に囲まれた白亜の城。
柱も壁もすべて竜のモチーフだ。
一歩城の中に足を踏み入れると神聖な空気が漂った。少し懐かしい気もする。なんで懐かしいんだろう?
とにかく、早くココに慣れなきゃ!
「クロ!早速城内を案内してもらおうよ。あれ?クロ?どこ?」
後ろに居たはずのクロードがいない。
「へ?クロ?おーい。どこだ?」
エドガーもきょろきょろしている。
後方にいたバレットが口をあけて真っ青になっている。
「みゃあおん」
「え?!」
アキトの足元から可愛い鳴き声がする。
「え?」
エドガーも二度見してる。
「ぶみゃあ~」
そこにはアキトの飼い猫だった黒猫のクロがいた。
耳には金のリングピアスが輝いている。
「ええ~~!!」
「うそだろ?!」
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