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第二章 2話マリッジピアス

 エドガーが机の上に手のひら大のジュエリーボックスを置いた。 「式は終わっちまったが、アキトがいた世界じゃ結婚指輪ってのがあっただろ?だからそれに似たようなのを送ろうと思ってさ」  ゆっくりと箱を開けると中にはゴールドのリングピアスが3つ入っている。 「わあ!綺麗!嬉しいっ!三人お揃いなんだね!すごいよ!ありがとう!!!ぁ……でも僕、耳に穴が開いてないんだ。あけてくれる?」 「おう!まかせとけ!三人一緒にあけようぜ!」 「エド……これは。まさか……」 「さすがだなクロ。見ただけで分かるのか?」 「え?何?どうしたの?」 「アキト、これは魔法付与が出来る聖石の周りをゴールドでコーティングしたものです」  エドガーは頭をポリポリかきながら、照れくさそうに話し出した。 「そのさ、アキトは魔女じゃねえか?それで俺は人間でさ。このままだと俺が一番早く寿命がきそうでさ。そのなんだ……。三人一緒に寿命を合わせたいんだが……ダメかな?」 「エド。お前、私の事も考えてくれて??」 「あ~、まあな、クロ、そのことは後でな。俺はさ、アキトと共に生きたい。クロだってそうだろ?それに俺やクロに先に寿命が来たら残ったアキトが悲しむ。魔女は長命だ。それに比べ人間や獣人は短命だ。だからアキトの寿命に俺らを合わせたいんだ」 「エド。ありがとうっ!凄く嬉しい。僕も二人とはずっと一緒に居たいよ。そこまで考えてくれてて本当に嬉しい!!」 「それでさ。そのあれだ。物は用意した。だけど俺には魔法付与できねえんだ」 「……その役目がわたしという事ですね?」 「おお。すまねえなクロ」 「いえ、ここまで用意してくれただけでも感謝です。寿命は私の一番の気がかりでした」  クロードはすでに200歳を超えている。彼は短命な獣人と長命な魔物のミックスだ。だからこそいつ自分の寿命がくるかと恐怖心も抱えていた。 「契約には三人の血が必要です。これは耳に穴をあけるときに一滴ずつもらいましょう。後はエド。本当に良いのですか?寿命が伸びると言うことは……その。親族よりも貴方は長生きしてしまうという意味ですよ」 「あぁ。すでに親父と兄貴らには告げてある。だから王位継承権も放棄したんだ」 「エド。そんな。いいの?王族なのに」 「最初から王家には未練なんてなかったさ。親父や兄貴達は好きだが俺には堅苦しい世界は似合わねえのさ」 「エドガーっ。ありがとう!!!」  アキトはエドガーに抱きついた。クロードもそっとその肩に手を回し3人で肩を組む様に抱き合った。 「じゃあ僕、お針子さんとこに行って耳に穴をあける針を借りてこようか?」 「おう!アキト行ってきてくれるか?じゃあ俺はクロと必要な材料出しておくからな」  アキトが部屋から出るとクロードがエドガーに向き合った。 「エド。寿命を延ばしても若さは保てないんだぞ」 通常は獣人と人の寿命を合わせる時に使う契約だが、魔女となると話が違う。 「でもっ!クロの方がこれ以上無理したら寿命がつきるか制御できなくて魔物になっちまうかもしれねえじゃねえか」 「その時は最初に約束したとおりにしてくれ」 「しかしっ!」 「それがお前をアキトの伴侶として認めるという条件だったじゃないか」 「そうだけどさ……」 「やっぱり!僕に隠し事してたんだね!!」  いつの間にかアキトが扉の前に立っていた。 「へ?お前いつ戻って?」 「アキト?」 「目くらましの魔法をかけたんだよ。僕に隠し事はダメだよね?」  ピリッとした空気が流れた。最近のアキトは怒ると鋭いナイフなような怖さがある。  普段のほほん美人なだけに本気で怒った氷のような表情にギャップ差が激しすぎるのだ。 「このまま寿命を延ばす契約をしたらエドガーはゾンビになっちゃうの?」 「あ~?はは……すみません。わからないです」 「ふうん。それで、クロードがエドガーにした約束ってなんなのさ!まさか魔物になったら成敗してくれ~とかじゃないよね?」 「ぐっ。それは……そのとおりです」 「なんなんだよそれ!!二人とも馬鹿じゃん!!そんなの僕が喜ぶとでも?!」 「アキト。怒らないでくれ」 「それにクロ!エドを伴侶にするときにこっそり二人で約束してたってのが気に食わない!僕らは三人で伴侶なんじゃないのか?」 「ごめんっ。ごめんってばよ。もう怒るなよ」 「怒るよ!お前らっ僕の覚悟を舐めてるんじゃねえぞ!!種族が違うってのもわかって伴侶にしたんだ!この先どんな姿になろうと愛し続けるって決めてるんだ!そのために自分も磨くし魔法も高めるんだ!」  「アキト。お前どんどんカッコよくなっちまうな」 「わたしの手の届かないところにいってしまいそうです」 「何言ってんだい!まだ口先だけで、これから僕は二人にもっとみっともないところも見せちゃうんだよ?!そして足掻いて足搔いて今よりもずっと良い男になるから。だから隠し事なんてしないで!」  アキトの大きな瞳からポロポロと涙がこぼれていく。 「アキトっ!」   クロードはたまらずアキトを抱きしめた。 「あ!てめえ!また先にやりやがったな!俺も!!」  エドガーもアキトをクロードから奪うようにして抱きしめる。 「くるひぃっ!!!」 「わわっ。すまねえアキト!」 「ふっふふふ。」  子供のように自分を取り合う二人の姿に思わずアキトが笑いだす。 「三人で一番ベストな方法を考えようよ」 「そうですね。明日までに文献でいろいろしらべてみます」 「でもピアスは今つけたいよ。せっかくだもの」 「そうだな。俺達が伴侶だってわかるようにしたほうがいいな」  お揃いのピアスを耳にはめるとなんだか互いの特別になった気がする。 「お揃いだ!三人一緒だね!!」 「ああ。コレを見ると俺のものだって気がする」 「わたしのですよ!」 「クロとエドは僕の物。そして僕はふたりの物だよ」

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