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第二章 11話 東の森-2
コバルトは青龍になってに舞い上がり雨雲を連れてきた。アキトは青龍の背に乗り先ほどと同じように祈りながら両手を上に伸ばした。伸ばした先からキラキラと光があふれ雨に乗り大地に降り注ぐ。
周りの竜たちはその光り輝く雨を翼をはためかせ、より遠くへと飛ばした。
みるみるうちにどす黒い土がなくなり茶色い地面が現れ、緑色へと変化していく。
「草だ!草が生えてきた!!おいっすげえぞ!!」
隊員達が叫ぶ。先ほどまでの暗い景色ではない。苔だったものが草になり花が咲き乱れていた。
「やったよ!成功だ!よし!このままもう少し先まで行こう!」
僕は最初に見た沼が気になっていた。あれはきっと池か湖だったに違いない。
だけど……なんでこんなに変わってしまったんだろう?瘴気のせい?そもそも瘴気ってなんなんだよ?何か良くないものだってことしかわかんないけど。まるで湧いて出たみたいじゃないか?
とにかく、緑を守るためには綺麗な水が必要だ。だからあの沼の瘴気を何とかしないとまた元のどろどろした景色に戻ってしまう気がする。
沼の真上で雨を降らすが表面だけは透明な水へと変わるがすぐにそこからこぽこぽとヘドロのようなものが上がってくる。
僕は青龍と共に沼の近くに降り、直接沼の瘴気をとる事にした。
「アキト。あまり近づくな。キケン」
「うん。わかってる。さあはじめよう」
僕は少し離れたところから沼に向けて手をかざす。後ろから抱きかかえるようにコバルトが腕を回してきた。
ううっ。この体勢はバックハグ?いや違うよな。しっかりしろ僕!
コバルトが自分の力を僕へと流してくれる。それに合わせて僕は「瘴気よなくなれ」と祈った。
バシュッ!!勢いよく水流が僕の手のひらから飛び出し沼へと放流される。
どんどん沼の様子が変化してきた。ドロドロしたぬめりのようなものがなくなりはじめ水底が見えてくる。
「よかった。これでこの一帯は生まれ変われるはず」
僕は嬉しくなって後ろから覗き込んできたコバルトに振り向いてほほ笑んだ。
「なあにやってんだ!!おまえらあ!!ああん?」
ドスのきいた低い声が響いた。おや?エドガーの声に似ている?
「おら!離れろ!アキト!浮気なんかするな~!」
あれれ?本当にエドガーだった。その後ろにはレッドがいる。あちゃあ。今の格好はどう見ても背後から抱きしめられてる恋人同士みたいだよね?ああダメだ。今夜はエドガーにめちゃめちゃにヤラレル?
すぐさま、僕の背後からコバルトを引き離すとエドガーにむぎゅうっと抱きしめられた。
「ぐはっ!ぐるじいい」
「このやろう!心配して追いかけてきてみりゃ、なんだよこれは!」
「ごめんなひゃい~。エド。ちょ。はなじをぎいて……」
そのとき、嫌な空気が流れた。突然ごぼごぼごぼぼぼぼっっと沼の表面が持ち上がり中からデカイ塊が出てきた。
「エドガーよけろ!!」レッドの声がした。
「アキト!」コバルトも駆け寄る。
エドガーは咄嗟にアキトを抱いたまま横に転がった。
アキト達が居た場所はジュウウッと音を立てて黒い煙が立つ。
水の中から出てきた塊はどろどろのカエルのような魔物だった。この魔物が口から瘴気を吐いたのだった。
こいつか?コイツがこの周辺を闇にしていたのか?沼の主なのか?
だとしてもこのままではすまさない。退治してやる!
魔物は目を左右ばらばらの動きをさせ僕らの動きを見ている。
げ?これってカメレオンみたい?
ぬた。ぬた。と濡れた音をたてて僕達に瘴気を吐き散らかしてながら近づいてきた。
エドガーは僕の前に立ち剣を素早く動かし空中で瘴気を分散させた。
瘴気は地面に落ちると草を枯らし始める。
そんな!せっかく緑が復活したのに。なんてことをっ!コイツ!許せない!
でもどうやって?
その時僕は以前従者のバレットが言っていた光の矢の話を思い出した。
そうだ、光の力を指先に集めで弓を持つように矢を放つ!的はヘドロガエルだ!
やれるかどうかなんて考えてる暇はなかった。僕は神経を集中させ癒しの力を指先に集めた。
あとは矢を放つだけ。「あたれっ!!」
ぱしゅっ!アキトの手を離れた矢はまっすぐに魔物に向かいその半身を射抜いた。
ぐぅおぁああおおお。異様な叫び声と共にパラパラと半身が消えてなくなってしまった。
「え?すごい……」
「アキト?」
「本当にあたった。やったぁ!」と僕は喜んでつい気を緩めてしまった。
その隙をねらわれた。魔物は大きな口から粘着質な舌を伸ばし僕を絡め取った。
「食われる?!」と思った瞬間、エドガーがその舌を剣でたたっ斬ったのだ。
同時にレッドの炎が魔物を焼包む。ドオンっと大きな音を立てて地面に魔物は倒れ込み地割れが起きた。
――――――その地割れの中に僕は落ちて行った。
「アキトぉおおおおおおお!!!」
エドガーの悲痛な叫び声があたりに響く。
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