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第二章 26話 崩れた結界-2
一旦、移転場所に戻るとレッドを呼び。コバルトとホワイトに伝達をした。
警備兵たちが一か所に集まっていたので、おそらくアキト達が見つかったのだろう。
「くそっ」
レッドが吐き捨て捨てるように言う。逸る気持ちをおさえ、持ち場に着いた。
「…今のうちに結界を壊そう」
獣人とコーネリアスを貫通してる槍は魔力で強化されていてなかなか壊せなかった。
しかし不意にその力が弱まったのだ。
「対戦してるのか?」
槍に流れている魔力が乱れたのがわかる。
アンバーは身近にあったコーネリアスの槍に体当たりをした。
グワンッッッ!!と空気が揺れると結界が壊れた。
槍が消えると同時にコーネリアスの身体に傷口ができ血が噴き出した。
これは?この槍はまさか……?
「アンバー!やべえぞ!獣人が魔物になっちまった!襲ってきてるぞ」
「なんだと?」
おそらく同じように槍に刺されてた三人の獣人のことだろう。
「コーネリアスもそうなるのか?!」
「わからねえが早く血を止めた方が良い!」
「わかった!アキトを探す!」
俺はレッドが魔物と応戦してる間を抜け王宮の中を突っ走った。
腕の中のコーネリアスは徐々に体温が下がってきている。
コバルト!ホワイト!早く来い!
アンバーが腕に抱えていたのは串刺しにされていたコーネリアスだった。
「コーネリアス!」
ユリウスが駆け寄りアンバーからコーネリアスを受け取る。
彼は顔面蒼白でぐったりしている。このままでは命が危ない。
「僕が治癒をかけます!」
「アキト頼むっ!助けてやってくれ!」
僕はコーネリアスの手を取り意識を集中させた。
背後はクロードが守ってくれている。尻尾は僕の腰にしっかりと巻きついていた。
「お前は竜だね?」
ラドゥが眉を寄せてアンバーを睨みつける。
「そうだ。俺は昔、人間にひどいことをした。その罪を今も背負っている。お前もそうじゃないのか?」
「ぐっ!ケダモノが!私の何がわかるというのだ!」
「わからないよ。だがお前はあの槍に生命維持を流し込んでいた。」
「それはっ。魔力を引き出すためだ!」
「こいつの命を奪う気はなかったんだろ?」
「やっぱりそうだったのか。ユリウス兄貴を困らしたかっただけなんだろ?」
エドガーがラドゥの手を取ろうと近づく。
「近づくな!」
ラドゥは後方に飛び、オスマンの傍に寄る。
「もう遅いのだ!何もかもがもう遅い!いづれそこの獣も魔物になるだろうっ」
ラドゥに指さされたのはアキトの背後にいるクロードだった。
「え?……クロ?」
アキトからはクロードの背中しか見えない。しかしその尻尾が小刻みに震えてる。
「ラドゥ兄貴。獣人にだけ作用する魔法を使ったのか?!」
「そうだ。結界は魔物の臭気のチカラも抑え込んでいた。それが破られた今、直前に臭気を吸った獣人は魔物に変わってしまう呪いがかけられるのだ」
だから魔力が弱まっていた串刺しにされた三人の獣人にはすぐに作用したのだ。
「コーネリアスの魔力がどこまで耐えれるかが見ものだな」
「ラドゥ!俺が憎いなら俺を狙えばいいだろう!」
ユリウスが苦悶の表情で肩を震わす。
「貴方を狙うだけでなく壊したかったのですよ」
「何故だ?なぜそれほどまでに?」
「何故ですって?そんなの……わたしが……王族の血を継いでないからですよ」
ラドゥの唇がわなないている。
「私は先王の息子が母に無体を働いてできた不義の子なのです!」
喉から絞り出すように苦し気に言葉を吐き出す。
アキトも薄々は気づいていた。予知夢で哀しみ苦しむラドゥの姿を何度も見た。
それに、あれだけ王族の血統を重んじるドラゴン城でラドゥの名前が出たことがなかったからだ。
竜たちは完全にラドゥを無視していた。
「魔物になってしまったらもう元の獣人には戻れません。呪いを解く方法はわたしを消すことです」
ラドゥが囁くように言うとオスマンと共に部屋から逃げた。
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