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第2話

 遥斗と泰生が出会ったのは一年前。  バーで飲んでいた時だった。いわゆる出会いを求める場所だ。同じ嗜好の人達が集まって来るので、素の自分でいられる。   「隣いいか?」    最初に声を掛けてきたのは泰生だった。   「いいよ」    チラッと見ただけで、遥斗の好みのど真ん中だと感じる相手だった。遥斗の事を同じように観察しているのを感じて、飲んでいたグラスを口から離すと、ペロリと唇を舐めるように赤い舌を覗かせた。それから、遥斗はバーで初めて見る泰生に聞いてみた。   「ここは初めて?」 「ああ。きみは?」 「オレは、たまに……かな」    低い艶のある声まで好みだ。グラスを握る泰生の筋張った手は男らしい。整えられた爪と長い指が、やけに目を引く。  遥斗は、この手で触れられたいと思った。  そこから少しのあいだ、他愛もない話をする。会話が途切れて、二人の視線が絡み合うと、泰生がカウンターに置いていた遥斗の手に手を重ねてきた。 「いいか?」 「……うん」  なにを? なんて野暮なことは言う必要はない。お互いの目の奥に欲がチラついている。  泰生と遥斗は、バーを出ると近場のホテルに向かった。  ───パタン  扉が閉まるのを待ちきれずに、貪るように互いの身体をまさぐり、噛みつくようなキスをした。  強引ではあるが、乱暴ではない触れ方に、遥斗は彼が手馴れているのを確信する。思わず口角があがり、今夜は楽しめそうだと高揚した。 「んっ、ねぇ、シャワーは?」 「いらない」  泰生も興奮しているのを隠そうともしないで、ベッドへ遥斗を押し倒した。 「待って。服脱ぐから」 「ああ」  キスをしながら、どんどんお互いに服を脱いでいく。全て脱ぎ捨てたあと、遥斗と泰生は貪り合うように何度も抱き合った。  遥斗の経験した中で、最高の一夜だった。    

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